第6話 あしかせ


 ――ダンジョン――


「意外とダンジョン楽勝じゃん……」


 俺は初めての魔物ピンクスライムを倒し、希望が湧いてきた。


 しかし、一つ問題がある。


 それは……


 俺の右足にはなぜか足枷あしかせがはめられ、鎖の先に鉄球が付いているのだ。

 その鉄球には何か魔法陣のようなものが描かれている。

 これはどう考えても、魔物の生贄いけにえじゃないか。


 あのクソ女神は、俺を本気で消すつもりだ。


 さっきのピンクスライムは、俺が途方に暮れているところに、向こうから近づいてきたから倒せたのだ。

 こんなハンデを背負ってこの先いつまで戦えるのか。


 そもそも、俺のいまの格好はスーツのみだ。

 しかも、怒髪天のパルルに両袖を千切られ、スラックスも膝から下が無く裸足。

 ほぼ防御力ゼロだろ。


 これじゃあ、どっかの芸人だな。ウケるんですけどもぉ。


「俺ってば、破れスーツに足枷あしかせつけてるぜぇ~ワイルドだろぉ……はぁ……」


 少々自分の境遇に笑えてきた。



 そもそも、おかしくないか? 勝手に女神に勇者召喚されて、夢だと勘違いして女神にちょっとスキンシップしたら、ダンジョンに追放て……。


「理不尽だぁぁぁぁぁっ!!! 女神出てこぉぉぉぉぉい!」


 叫び、地団駄を踏むも、鎖がジャラジャラとむなしく鳴るのみであった。


「はぁはぁ……疲れた。どうせならモミモミしとくんだった……」


 そんな深い後悔をしている時、岩陰からのそりと何かが現れた。



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