第4話 やっちゃった


「……コロス」

「えぇと……はい?」


 次は何しよっかなぁ、と鼻息荒く妄想を膨らませている最中、突然降って来た物騒なワード。

 ふと見れば、なぜかぷるぷると微細に揺れるパルルのお胸に気づいた。

 ゆっくりと視線を上にあげると……


「ひぃっ!?」


 心臓が数秒止まった――


 般若がいましたぁぁぁ!!! 怖い怖い怖いっ!

 これはあれだ、よくある、Hな夢は丁度いいところで目が覚めるってやつだ!

 でも……悪夢に変わるなんて聞いて無いんだけどぉぉぉっ。


 俺は生命の危機を感じ、すぐさま回れ右で逃走をはかった。


 ダメでした……。


天斗てんと君? ここから……逃げられないわよ?」


 着ているスーツの襟首をがっつり掴まれ、先程までの清楚な声とは明らかに違う、ドスの効いた低い声が背後から……。


「くそっ、万事休すかっ」


 ……ん? そうかっ! 冷静に考えれば、これは夢だった。

 現実に獲って喰われるわけでなし、痛みだって自らの思い込みでしかないんだよね。

 そう自覚すれば怖いものなど無きに等しい。俺は少し安堵した。


「天斗君? 崇高な女神様のお胸をもてあそんだ罪は万死に値するのよ? 分かっているわよね?」

「ひゃっ」


 俺が平静を取り戻そうとしていると、グイと襟首を引かれ、のけ反る俺の顔の真上に、逆さになった恐ろしい般若の顔が。


 チビリそう……マジで殺される!?

 いやいやいや、悪夢ってのは気持ちで負けたらダメなんだ。


「わ、分かった、俺はもう逃げない」

「あら、意外と素直なのね」


 俺が観念した態度を示すと、ようやく解放された。

 すると、パルルの機嫌が直ったのか、元の美しい顔へと戻りホッとする。


「天斗君にどんな罰を受けて貰おうかしら。そうねぇ……ふふふ、あれもいいわね、いえあんなのも捨てがたいわ……ふふっ」


 パルルはいま他所よそを向き、俺にとんでもなくひどい罰を考え中らしい。

 もの凄く悪い顔をしていて、とても怖い。


 ツンツンしただけなのに、なんて恐ろしい自称女神だ……。


 だがしかし問題は無い。

 俺は悪夢の流れを断ち切る良い方法を考えついていたのだ。


「パルル」

「あら、どうし……んむっ!?」


 俺はパルルの柔らかな肩をがっしり掴むと、彼女の魅力的でぷるんとした小さな唇を奪った。




 そう……これが俺の人生最大のあやまちであることも知らずに……。

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