***


「──ええ、はい。そちらに関しましては──」

誰かと話しているお兄ちゃんの声がする。電話だろうか。

ふだんからは想像できない物腰のやわらかさと口調のかたさだ。仕事だろうか。

「はい。ではそのように。はい。では失礼します。はい」


電話が終わったみたい。

いまなんじだろ。iPhoneをつけると13:12となっている。さすがに寝すぎた。

もぞもぞとベッドから這い出すと、お兄ちゃんがキーボードを叩きながら顔を向けずに話しかけてくる。

「おはよう、眠り姫」

「おはようございます。お兄様」

「ドラゴンボールみたいな寝癖でその口調はちょっとシュールだな」

「左様でございますか」


見てもないのにボサボサの髪の毛を指摘してくるのは流石過ぎる。

キッチンに行き、冷蔵庫からピッチャーを取ってコップに水を注ぎひと息に呷る。



いいね


そういえば、さよ達にLINEするのを忘れてた。

LINEを開くと既に未読36になっている。

母……はいいや。あとで、あとでね。

H S P陽向をスペシャルに盛り上げるパーティ団を開く。

この名前は普通に嫌なのだが、私が変えても直ぐに他の誰かが戻すので諦めた。団の意味被ってない? というツッコミも封殺された。

納得いかない。


まあそれはそれとして。


〈 5    HSP団 (6)      ≡

─────────────────────


        (昨日)

(    ここから未読メッセージ    )


①<(陽向?ちゃんと着いた?)21:52

①<(落ち着いたら連絡してね?)21:52


②<(ママかよ)21:53

   それ少なくとも数日は連絡

②< 来ないんじゃね?     21:53


③<(ありうる)21:54


   兄妹水入らずの時間も必要

④< なんじゃない?      21:54


③<(意味深)21:54


⑤<(あらあの二人ってそういう?)21:54


   それはさすがにお兄様に失

①< 礼でしょ二人とも!    21:56


   そのお兄様はここにはいな

②< いんだからいいじゃん   21:57


①<(いや、まあそうだけど、)21:58


   私も気持ちはわかります

⑤< あの人、いいですね   21:58


②<(ライバルが増えたな、小夜)21:58


   いや?私は歳下しか興味あ

⑤< りませんから       21:58


   あのようなお兄様がいたら

⑤< 好ましいとは思いますが  21:59


   このかんじ、しばらく返事

③< なさそ          22:02


   お涼の誰得ツンデレに誰か

②< 反応してやれよ      22:06


①<(無事届いたらしいです)22:59

   お兄様から連絡がありまし

①< た            22:59


③<(よかった)23:00


⑤<(無事で何よりです)23:02


④<(これはお土産に期待だな)23:12


 >>⑤(あのようなお兄様がい)

   あれ、涼子お兄ちゃんいな

④< かったっけ        23:12 


③<(寝た)23:15


   お兄様はお盆に帰ってくる

①< らしい!         23:15

    👍👍❤👍


   なんだかんだいってお前ら

②< お兄様好きやな      23:18


        (今日)


 >>④(あれ、涼子お兄ちゃん)

⑤< しらん          08:22


④<(口調変わるほど嫌いなん笑)09:38


②<(眠り姫返事まだねーな)09:50


③<(ゆうべはおたのしみでしたね)10:00


④<(何がお楽しみだったのやら)10:37



……かなり好き放題話してるな。

てか、するわけ無いでしょ、実の兄なのに。

……仮に私が迫ったとしても、縁切るレベルで拒絶されそうだから試したくない。


まあでも。

お陰様でここまで来れたのだから、素直に感謝の気持ちしかない。

新幹線の切符はそんなに安いものではないのだから。

良い友達を持ったことに感謝しよう。

多少の弄りも……甘んじて受けるとしよう。


いやでも流石に実の兄とは無いわ。

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