⚃話 準備するぞ!(食)

「あのさー……別にワタシ達は家で待機してて、ダイチン1人でルールブック買ってくれば良かったじゃん。また外出るのやだよ!」


 本を買い。

 近くのバーキンで朝食を取る3人。

 店内の冷房とカロリーを摂取した青少年達の体力と気力が回復した所で、今まで死んだ魚の目をしていたリッカがようやく元気を取り戻すと、不機嫌に文句を言い始めた。

 オニオンリングを食べていたダイチは落ち着いた口調でそれに答える。


「理由簡単だ。俺は二人共大好きなんだ」

「「ブフゥ゙!?」」

「お前達とずっと一緒じゃないと嫌だ、寂しい……」


 女子2人はそれぞれ飲んでいた茶色と緑色の液体を口と鼻からぶちまけむせかえる。

 ダイチは続ける。


「よく考えてみろ。俺達は保育園の頃からずっと一緒。小学校に中学校も一緒。家族合同で旅行も行った。お泊り会もする。今年も山も海、ネズミ王国も猫王国も行った。市民プールも、花火大会もずっと一緒!」


 彼の言葉を聞き、女子達は天井を見上げてそんな事もあったなと楽しい思い出を振り返っていく。

 マユミが頬をかきながら、


「た、確かに、そう言われたら私達ってずっと一緒にい過ぎかも……」


 そういうとリッカはウンウンと腕組みをしながら頷いた。

 ダイチは止まらない。


「もはや、俺達は幼馴染の垣根を越えた兄妹……いや、一心同体と言っても良い! 一緒に風呂も入ってきたんだから裸を見たって恥ずかしくない仲じゃないか!」

「いや、それは恥ずかしいから着替え中は入らないで!」


 マユミは今朝の事を思い出して突っ込む。


「そんな事を言うな……マユミもリッカももはや俺の半身そのもの……裸の付き合いをした仲じゃないか」

「そういう言い方は止めて!」


 マユミが更に突っ込むが、それでもダイチは止まらない。


「とにかく、俺はいなくなったら寂しいんだ。マユミとリッカが一緒にいないと駄目な身体になったんだ」

「まあ、それなら……仕方ないか……ダイちんのためだし」


 ダイチの感情こもった力説にリッカはまんざらでも無さそうに茶色い液体をストローですする。その様子を横目で見るマユミはオニオンリングを食べる。


「という訳で、今日は1日TRPGをやるぞ! バーキンで涼んでる間にルールとかキャラクターの制作方法を考えよう!」


 強引に話を進めるが、女子達は馴れているのかすんなり彼の言葉を受け入れる。


「あ、あの〜」


 マユミが手を上げる。


「それで……結局TRPGってどんなゲームなのかわかってなくて……私でも出来るの?」


 彼女がおずおずと不安そうに質問すると、得意げにダイチが口を開く。


「説明し――」

「ワタシが説明しよう!」


 彼の言葉に割り込みリッカが話を始めた。



〈リッカが呪文『チュートリアル』を唱えた〉

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