高音を聞くと頭って痛くなりがち

 一通り工場内を見て回り、最後にお土産のようなものをもらって解散となる流れになった。

 正直工場見学とかいまさら子供っぽいと思ってたけど、たまには良いもんだね。こういう工場の生産ラインとか間近で見る機会とかそうそうないし。

 

 俺以外にも一般の客、多分中学生から高校生ぐらいの子たちも満足げな表情を浮かべている。

 後は下手なことせずにお土産もらって帰りましょうかね。

 

 そう思いながら休憩エリアでジュースを飲んでいると、いきなりキーンと高く耳障りな音が聞こえてきた。

 その音は耳の奥から脳の裏側にへばりつくように残り、頭痛と不快感を与えてくる。

 

 休憩時間が終わり、見学者たちを集めて今日の締めに入るようだ。

俺はこの唐突に表れた不快感と頭痛を我慢しながらみんなが集まっている場所へ向かった。

 

「今日はみんな来てくれてありがとう。最後にこのバイザーを君たちに上げようと思う。早速つけてみてくれないかな?」

 

 案内役の女とその周りにいる助手みたいな人たちが笑顔でそのバイザーをみんなに配布してきた。

 俺もそれを受け取り、どこかデジャヴを感じながら頭に装着しようと────

 

「っっっっ!!??」

 

 完全に装着しきる前にとっさにバイザーを地面に叩きつけ、そのままその場から逃げる。

 

「一人逃げたぞ!!捕まえろ!」

 

 後ろから怒声が聞こえるが無視して出口へ向かって突っ走る。

 そうだ、なんでわからなかったのか。あのバイザーこそ『マジリバ』で出てきた洗脳バイザーそのものじゃないか。

 

 かなり危なかった。あれは一度つけられると外すことが困難で、どれだけ抵抗しても一定時間で確実に洗脳され切ってしまうヤバいアイテムなのだ。

 精神の数値で猶予時間が決まるので、今の俺なら猶予時間自体はあるはず。けれど戦闘能力の低下は確実だろう。

 

 そしてさっきからうるさいこのキーンとした音も多分催眠効果があるようなもので、さっきはそのせいで危うくバイザーを自分からつけてしまうところだった。

 これらのせいで1人目も2人目も洗脳されていったのだろう。バカみたいに精神を上げた俺でさえ途中まで催眠されていたのだ。抗えるはずもない。

 

 俺は魔法少女に変身し、身体能力を上げて一気に突っ切る。

 しかし、出口はシャッターが閉められ、俺の力でもびくともしないほど強固なものだった。

 窓ガラスが割れるかもしれないと思い全力で殴ってみたがヒビすら入らない。

何度も何度も殴り、色々なスキルも使ってみるがうんとスントも言わない。

 

 早くしないと敵が追い付いてしまうため、別の出口を探そうと踵を返そうと後ろを振り向いたとき

 

────機械の腕が俺のお腹に向かって振り抜かれた

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