脱出ゲームで鬼がいきなり自分の近くに集まってきたら焦るよね

「ゴフッ........!?」

 

 全く気配を感じさせなかった警備ロボによってそのまま壁まで吹き飛ばされる。

 幸運にも急所からは外れたようでお腹の痛みを抱えながらよろよろと立ち上がることができた。

 

 拳に力を貯めていく。

 この警備ロボはゲームだと魔法少女に対抗するために作られたものであり、高い魔法防御力を誇っている。

 だがしかしその代償に物理防御力は高くないので通常攻撃や物理技で戦うのがセオリーだ。

 

 先制攻撃を喰らって本調子ではないとはいえ、こいつを倒すのには十分だ。

 

「『破砕撃』!」

 

 一気に接近し、密着して確実に当てる。

 警備ロボには俺の拳ほどの深いクレーターができており、そのまま珍妙な音を立てながら崩れ落ちた。

 さすがに魔力をまとっていたとはいえ機械を殴ったせいで少し手がジンジンしている。

 

 他の行っていない場所を探そうとした時、ガシャンと機械特有の動作音がした。

 警備ロボが戦闘音に釣られてここに集まってきているようだった。


 長居は出来ないので警備ロボがいない道を突っ切る。けれど何処もかしこも警備ロボがたむろし道をどんどん塞いでいく。

 そして、ついに囲まれてしまった。

 

 前にも後ろにも数体の警備ロボ。合計で10行かない程度。

 ゆっくりと近づいてきて────前後から同時に襲い掛かってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ................................ここは何処だろうか。

 ふわふわとして心地よい。

 ぬるま湯に全身浸かって流されているような感覚の中、意識だけはっきりとしてきて────

 

────果てしない頭痛に襲われた。

 

「っっっっっっっっっっ!?!?!?」

 

 君の悪い音と映像。それを感じるたびに俺じゃない何かが侵食していく。

 のたうち回ろうにも手足にか枷がかけられているのかうまく動けず、無様な格好で暴れるしかなかった。

 

 

 

 しばらくして頭痛が穏やかになる。その時にようやく自分の現状を理解した。

 体は素っ裸で何も身に着けておらず、手足には枷と変な紋様が刻まれた首輪。腕には識別番号のようなものが焼き付けられ、そして頭には半透明のバイザーのようなものがつけられていた。

 

 今の恰好を見て『あぁ、俺掴まったんだな』と察した。

 この恰好は研究所で敗北すると付けられるバステ達であり、ここの施設にある鍵を手に入れないとどれも外すことは出来ない。

 

 まあゲームだったら都合よくここから抜けられる穴があって、その先に進んでいくと鍵があったりするんだが、どうやらそんなものはないらしい。

 

 じゃあどうしたらいいのかといったら『助けを待つ』。これしかない。

 俺が失踪したってわかったらさやかとかほかの魔法少女の誰かがここに乗り込んでくるでしょ。

 

 ただ俺につけられたこのバイザー、これによる洗脳が100%になるまでに、というタイムリミットはあるが。

 このバイザーは付けた対象を思いのままに洗脳できる優れものなんだが..........洗脳度が100%にならないと永続的に操ることは出来ない。

 

 なぜなら洗脳が完璧にできてないと少しづつ洗脳の効果が薄れていってしまうから。

だからまず洗脳度をMAXにするための調教が行われるのだ。

 そしてゲームでは精神が高ければ高いほどこの調教によって上がる洗脳度を減らせるという仕様があり、大体ここまで来るときに精神をLVアップ以外で上げてなくても5日は持つ。

 

 それの理屈で考えれば、まあよほど時間がかからなければ洗脳され切ることはないでしょう。

 ただまあ、ね?洗脳されるときってすごく頭痛いからできれば早く助けてほしいなぁって。

 

あ、ちょっと待ってまた頭痛がk

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る