愚鈍
先輩を『協会』の医務室へと運び、魔法少女ごとに割り当てられている待機室で待つ。
先輩に刻まれてた『淫紋』────あれは何だったのだろうか。
普段から露出の少ない服を着ているが、服の好みは人それぞれなので特に何も思わなかった。
今思えばきっと私たちに隠すためだったのだろう。
自分が無様に負けた『証』のようなものなのだ。私だってそのようなものを付けられたら隠す。
だけど、私のせいで先輩は……………
どんどん浮かんでくるマイナスな考え。
自分を責め立てる心の声に耐えきれなくなり、逃げるように私は先輩が住んでいる部屋に向かった。
コンコン
ドアをいつもより弱々しく叩く。
先輩は居るだろうか。まだ医務室で処置をされているかも知れない。
それでも私は早く先輩に会いたかった。
その気持ちは心配しているのか、それとも罪悪感を薄れさせるためなのか。
その判別は未だに付けずにいる。
「………………誰?」
「私です。さやかです。心配で見にきました」
ガチャリとドアが開き、珍しく薄着の先輩が姿を表した。
そのお腹にはうっすらとピンク色の模様が見え隠れしている。
「…………私は見てのとおり大丈夫」
先輩はそういって普段は中々みせない小さな笑みを浮かべた。
きっと私を心配させないように気遣いをらしているのだろう。
けれど私は、ズカズカと不躾に部屋へ上がり込み先輩を後ろから抱きしめたまま近くのベッドに座った。
「さ、さやか…………?」
「ごめんなさい先輩。……………すこしだけ、こうさせてください」
ぎゅっと少し力をこめて小さな先輩を抱きしめる。
普段魔法少女として力強く戦っている体は、簡単に折れてしまいそうな程細くて。
私はこんな小さい子に守られていたのだと強く実感させられた。
「..........先輩の、その、模様って.......」
私は恐る恐る聞く。
きっと答えてくれないだろう、そう思っていたとしても聞かずには居られなかった。
「別に、これは私が好きで付けたようなもの。……………だから、そんな気に負わなくても良い」
先輩はこちらを振り向くそう告げた。
どんな顔をしているかは分からない。けれど、また先輩に気遣わせてしまったということだけは分かった。
そんな未熟な自分が情けなくて悔しくて、私は先輩のことを再び強く抱きしめた。
そこから私はさらに強くなって、先輩と肩を並べられる事を第一の目標にして努力した。
先輩に技を色々と教えて貰いながら、自分を高めていった。
────少しは先輩に追いつけたかな?
自身もついて、このままうまくやっていけると信じ切っていた。
そんな自分に待っていたのは
────粘液まみれでお腹を妊婦のように膨らませ、倒れ伏す先輩だった
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