95 女媧は天地を修繕するのこと

 旅行から帰ってきた女媧じょかは、自分のドールハウスがメチャクチャになっているので、驚いた。


「なんなの、これ!」


 世界の天は崩れ、地は裂け、水はあふれかえり、火はとどまるところを知らず、ヘビの化け物がびたんびたんと暴れ回っている。


「私、こんなヘビの化け物、つくったかしら?」

 女媧はヘビをつまみあげ、しげしげと見た。

 ルーペを持ち出す。


「ふーむ、なかなか良い材料つかってるわね。

 仕上げも細かいし……じゃあ、きっと私がつくったのね」


 盤古は天地開闢てんちかいびゃくしたが、そのあとは放ったらかしで、女媧が人間や動物をつくって、この世界に配置していったのであった。


「あら、なにか刺さってるわ」

 女媧はヘビの下半身のでっぱりに、トゲのようなものがあるのを認めた。

 矢の先端をペンチで折りとって、ピンセットで矢をズイッと抜いた。


 ――それはそれで痛い!


 だが女媧は五色の石を砕いて、混ぜてつくった、良質なパテをもっていた。

 それをぬってやると、ヘビはたちまち大人しくなった。


 ヘビをドールハウスに戻そうとしたが、世界中がめちゃくちゃになっている。


「これを直すのは大変そうだわ……」

 女媧はひとまずご飯を食べることにした。


 チルド餃子を焼いている間「この補修の様子を動画にとったら面白いかも」と思いついた。

 ――タイトルは「壊れた世界を修復してみました」とか。


 そして食後、機材を用意してドールハウスの前に座った。


 彼女は、まず世界に混沌未分こんとんみぶんの白い霧をかけた。


 東西南北の下に、四つの亀を配置して、極を直した。太陽と月と星の配置を、もとに戻す。

 大地のズレを直すため、他から山脈をもってきた。天の柱を新たに立てて、空がずり落ちてこないようにする。

 そして人間たちの命を元通りにするため、彼らに泥を一滴ずつ落としていった。人間はみんな、もともと女媧がこねた泥から生まれたのだ。


 女媧はフライパンも洗わないまま、コツコツとドールハウスを修繕していく……。


 以下、次号!

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