第4話

   

 最初に「野生のけものたちの専用道ではないにしても」と表現したけれど、ここはいわゆる獣道けものみち

 道は途中で、いくつかのルートに分岐していた。


「なるほど。小さな子供なら、これは迷子になってもおかしくないな……」

 しみじみと呟きながら、私は歩き続ける。

 子供の目線ではそこまで見えないかもしれないが、大人の目の高さならば、分岐地点からでも「こちらはすぐに行き止まり」と見えるルートがいくつもあった。

 それらをけながら、基本的には上へ上と、なるべく太い道を選んで進んでいくと……。


 前方が明るくなる。

 開けた場所に出たようだ。


「ほう……」

 思わず感嘆の声が漏れる。

 山頂ではないけれど、それに近い場所だった。小さな部屋くらいの広場で、見晴らしも良い。

 ちょうど反対側らしく、うちの家は見えないが、似たような民家や畑が眼下に広がっていた。


「ある意味、ここが山登りの終点かな?」

 なんとなく開放的な気分にもなり、私は無意識のうちに、例の歌を口ずさみ始めた。

「山で遊んじゃ、いけないよ。迷子になって、困るから。山は危険が、いっぱいだ。クマにイノシシ、悪いひと」

 ちょうど二番まで歌い終わった、その時。

 どこからか人の声が聞こえてくる。

 すすり泣くような子供の声だった。

   

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