第21話

 どうやって取り返したものか、コントロールの上に、電磁操が上書きされているせいで、無理に動かすことすらも出来ないし、無理やりに魔法を男に向かって使おうものなら間にある、細刃を壊してしまうことになる。


 やはり自分が作ったものを自分で壊すのは気がひける。


 正確には俺ではなく、記憶が無かった頃の、須田英治という人間が作ったものなのだが。


 魔法術式で作られた魔法は、特定の魔法を魔法術式にぶつける事で、魔法を壊すことが出来る。


 人や建物などに全く害がないのにも関わらず、魔法だけを壊すことが出来るため、それが出来る魔法師は、かなり重宝される。


 ちなみにそれがしずくだ。


 そんな事は置いといて、普通は魔法はいきなり使えるような代物では無い為、そんな魔法は使えない。


 俺の場合は、前世を頼りに魔法を使っているだけなので、知っていても使えないなんてことが多い。


 閑話休題


 魔法が壊れる音と同時に、魔法術式の中で作られていたサートがポロポロと崩れ始める。


 サートとは?


 魔法術式の中に先に保存しておく、魔法陣の様なものだ。


 魔法陣と違い、応用が効いたりする。


 魔法陣は作るのと発動するのに魔力がいるのだがそれが発動にしか要らないこと。


 などと言ったサポートの為のものだ。


 魔法が消えた為、自由に動かせる様になった細刃を元の形に戻し、別の魔法を発動させる。


「地獄氷」


 俺がそう唱えると、俺の足元に魔術陣が歯車のように接続する形で3つ現れる。


 魔術陣はクルクルと回り出し、魔法を発動させる。


 俺の足元にの地面が凍り付き、それが同心円状に広まり、男の足元から氷が出来て身動きが取れなくなる。


 使いたく無い魔法ではあったが、何をしてくるか分からないやつを、単に拘束するだけでは駄目な気がしたので使った。


 何で使いたく無いかって?簡単だよ。


 凍傷になったり、後遺症が残ったりして、責任を取るのが面倒だったからだ。


 正直、面倒な法律がなかったら、瞬殺しているタイプの人間だろう。


 俺自身、伝説?と言うか、昔話では先代の教えを守って殺しをしなかった。


 と有るけどガッツリ殺してる。


 先代の教えなんてあって無いようなものなのだから。


 俺の手はかなり真っ赤に染まっている。


 当たり前だが、善良な一般人を殺すような事はしていない。殺していたのはあくまでも犯罪者とかで有る。


 閑話休題


 男は頭以外凍り付き、身動きが取れない状態になっていた。


「ドサドサドサッ」


 重そうな武具を装備しながら移動するときの音とともに、フル装備の警察が現れる。


「カチャッ」


 警察らは銃口をあちらこちらに、向けて警戒をするが状況を理解すると、ライフルを下ろす。


 先頭にいたリーダーの様な人が、なにかのサインをすると、警察らは凍り付いた男に近寄り、対処を始める。そうするとそのリーダーがこちらに近づいてくる。


「君が今回の被害者の須田英治かな?で、そっちに居るのが、柏木しずくだな」


 教えているはずのない名前をいきなり言い当てられ少し驚く。


 本当に警察なのか?


「我々は軍のものだ。国立科学魔法高等学校のに関することをやったりする特別班だ。多分近いうちにまた同じに名前を聞くことになるだろう。ちなみに怪我だったりは無いか?」


「無いです」


 やっぱ、警察じゃなかった。こんな短時間で調べれるはずないもんな。


「なら良かった。あれは君がやったんだよな?」


 軍の人は凍り付き、ヘルプコールをしている男を指差す。


「はい、でも本人より1センチほど大きく作ったんで簡単に外せますよ」


 俺がそう言うと、俺たちと話していた男が、腰に挿さっていた警棒を伸ばし、それで氷を叩き割る。


 やっぱり、ただの警棒じゃないんだな……。


「あと、この事はくれぐれも秘密にしておくれよ。友達や先生方にもね」


 軍の人はそう言うので、「分かりました」と答え、その後に「えっと……」と言って名前を言わせるように促す。


「蒼兎正弘だ。2つ名としては『廃化』の異名で通っている」


 軍の中の名前であって本名じゃ無いんだろうな。


 というか、最初っから尋問ができないって分かってんだったら、零式の棘で麻痺させておけばよかった。


 尋問する為に、しずくがこないと成立しない賭けなんかするべきじゃなかった。


 はぁ、無駄な時間と魔力を消費したな……。


 そんな事で後悔しつつも、飛翔で飛んで帰ったのだった。


 その日は疲れた為、特に会話もせず、風呂に入り寝てしまった。


 ※


 次の日、目覚ましの音で俺は目を覚ました。


 意識が覚醒していな居ない中、今日は学校が休みのため、普段着に着替えて、リビングに移動した。

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