第19話

 奴らからしてみれば、性能がいいものの方が断然いいに決まっているからだろう。


 性能が悪い魔法師や魔工師なら沢山いるのだから。


「特に敵の中で一番強いと思われる黒装束と接触戦闘をした、須田。お前はテストも良かったし、狙われる対象としては十分過ぎる。こちらの落ち度でもあるが、これから気を付けてくれ」


「……。分かりました」


 ※


「あそこで何を言っても意味はないって分かってても、酷くない?テストの結果とか諸々を盗まれたのはいいんだよ。良くないけど。それは別として、多少の護衛ぐらいはつけて置いても良いんじゃないの?」


「まあまあ、そこは仕方ないじゃない?そもそも護衛なんかつけられたら邪魔なだけだし、なんかあったらしずくが居るでしょ?」


 俺たちは、夕ごはんのあとそう話し合う。


「そうだけど〜……」


 しずくがそう言うとインターホンが鳴る。


 俺が立ち上がろうとすると、しずくが「私の方が近いし、私行くね」と言ってくれた。


『軍のものだ。御宅の須田英治と言うものに話がある。拒否権はない』


「……。分かりました」


 しずくは渋々そう言うと、困ったように俺と目を合わす。


「どうしたら良いのかな?」


「行く……しかないだろうな」


「うん……」


 俺たちはバロットだったり、魔法をサポートする魔法術式を装備してから、玄関に移動する。


 俺はしずくと目を合わせると、しずくはこくりと頷く。


「どうしました?」


 ドアを開き、軍と自称する人たちに問う。


「先程も話した通り話がある。付いて来い」


「ここでは駄目でしょうか?」


「駄目だ」


「じゃあ、私」


「同行は認められない」


 男はしずくが全てを言い終わる前に、そう答える。


 ※


「ちなみに、今はどこに?」


「答えることは出来ない」


 数分前、俺は軍の車に乗らされて移動中である。


 運転席に一人、助手席に一人、後部座席の右にもう一人と、左に俺がいる状況である。


 男率が高い……。それもすごい大柄な奴しかいないし……。


「ここだ」


 窓が無いため、今何処に居るのかは分からないが、不安は一切無い。


 俺は言われた通りにして車から降りると。ー否。降りようとしても、降りられない。


 車の窓が開かないのだ。


 その瞬間、煙のような物が車の中に蔓延して意識が段々と薄れていき、そのまま意識を失ってしまった。


 ※


「おはよう。気分はどうだ?」


 俺は眼が覚めると拷問椅子?のような手足と腰あたりを拘束するタイプの椅子に座らされていた。


「良い訳がないだろうが!」


 俺は、何かで見た覚えがあるのを真似て、それっぽくしてみた。


「おーおー怖い怖い。でねぇ、英治くん。今どう言う状況にあるか、分かってないようだから説明するけどね。君は今僕らに捕まってるんだよ。やろうと思えば、君の手足を削ぎ落とせるぐらいにはね〜」


 男はそう言うと、じゃんけんのチョキと同じ形の指を、ちょきちょきとニッコリとした笑顔で、ハサミのように動かす。


 男は、マスクなどを付けず自分の事を隠す聞かないところから見て、俺のことを帰らせる気が全くないことがわかる。


「なんで俺なんかを!」


「簡単な事なのねぇ、君は全く使えないはずの魔法を、発現したと同時に使いこなして、マナブーストまで使えるような天才だからね。それにあの自作のバロット、喉から手が出るレベルで君が欲しいと思うのは当たり前だと思うけどねぇ」


 男はそう言う。


 俺のマナブーストだったりを調べることが出来ることが出来る、組という事なのだろう。


 予想としては、ここがセントチュアリーのテストの結果を盗んだとして考えていいだろう。


「バコォォォォォォォォォォン!!!」


 部屋の金属で出来ていたと思われるドアが、大きな音を立てて曲げられ外れる。


「なっ!?」


「英治!指揮権を戻すね。というか大丈夫だった?」


「ああ、大丈夫だった。ありがとうな」


 俺は戻ってきた、黒いバロットあらため、零式で自分の拘束を解く。


「じゃあ、反撃開始と行きますか!」


 俺はそういうと、零式の中から白い刀バロットあらため、細刃さいばを取り出す。


「なんで!?部下たちは!?」


 男は慌ててそう叫び、通信系の魔道具を使うが返答が無いようで、慌て用が加速する。


「なっ、なんで!?」


「簡単な話さ、通信阻害の魔道具を使ってる人がいるもんでね」


「誰がァァァァァ!!!!おい!!来いよ!!お前らの長がピンチだぞォォォォォ!!!!」


 男は、次の日喉がガラガラになっていそうなレベルの、大きな声で、お仲間を呼ぶ。


「ざんね〜ん。あなたのお仲間さん、みんな戦闘不能っぽいですよぉ〜。ね?」


 やばい、自分でも分かるけど、口調がすごい変わっては気が……。


「フフフフ」


 零式からは、しずくが笑い声を中途半端に抑えているため、逆に不気味にも聞こえる。


 俺は零式を中心に、棘を飛び出させる。


 ちょうど、ナパーム弾で溶けて、氷柱のようになった煉瓦のような感じのを。


 この棘は黒いし、先端がとんでもなく尖っているので、痛そうに見えるだろうが、棘自体は柔らかめのゴム製だから痛くない。ゴム製でなく、ガチガチの金属製のも作ってあるけど。


 その代わり、棘に付与されている麻痺が触ると発動して、意識はあるが動けない。と言った状況が3時間ほど続く。


 正直、金属製の奴だけは使いたくない。採掘だったりといった、破壊力の向上だけでなく、鋭さもとことん上げてしまった為、人の体どころか、どれだけ硬い鉄筋コンクリートだろうと、簡単に貫けてしまうだろう。


 しずくは零式についたカメラで俺のことを追いかけ続けていただろうから、こいつらが通ってきた道と、騒ぎを聞きつけて飛んできた真面目なお仲間さんたちは全員外で動けなくなっているだろう。


 閑話休題


 武器があれば惜しまず使うところとかが、やっぱりすごい似てるな。


 俺が、男の不安を煽るように、そう言うと男の顔が何かを決心したかのような顔に変わる。


「だったら力尽くで!従わせてやる!!」


 男は懐からナイフを片手に3本ずつ持ち、戦闘する気満々の体制をとる。

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