第17話
今回の中間テストは副教科が無いため、三日間で終わった。
「終わった。中間テストが終わったぞ!」
秀太は、中間テストの3日目の2時間目のテストが終わると声を上げる。
声のボリュームは落としてはいたが、いきなり立ち上がったのだから、全員から視線を向けられてしまうのは仕方ないと思う。
秀太は、恥ずかしそうに席に着席する。
「秀太、乙」
かおりがそう言って秀太を煽る。
「ヴッ」
俺はその光景を見て言葉をぽろりと零してしまう。
「二人ってお似合いだよな……」
何故こんな事を、零してしまったのか分からないが、意図せずに言ってしまった事だけは確かだ。
「それは無いぞ、英治」
秀太は、らしくもなく冷静に受け流すが、その言葉に過剰に反応してしまったかおりは、少しだけ顔を赤く染めていた。
其処にしよりが、面白半分とでも言いたげな顔を一瞬だけ浮かべ、ちょっかいを出す。
「お姉ちゃん、大丈夫?顔赤いけど」
いかにも、何も気づいて無いですよ。と言った感じで攻めるしより。
「だ、大丈夫って何の事よ。べ、別に顔も赤く無いし」
まんまと、しよりの演技に引っかかるかおりは、少し動揺しながらも返事をする。
本当に演技なのかを疑ってしまうぐらいに、演技が上手なしよりに、それにしっかりと騙されてくれるかおりを見ていると中々に愉快なもので有る。
「そっか、なら良いんだけど」
この場での攻めは諦めなのか、一時後退することにはなったが、「良いんだけど」と言う言葉が一切感じ取れないほどの、「後でまたちょっかいを出してやろう」感がハンパない。
そんな事は置いといて、普通ならば、部活もない為、このままホームルームも無しに下校なのだが、生徒会だけは仕事があるらしく、生徒会室に呼び出されていた。
「ねえ、英治そろそろ行ったほうがいいんじゃない?」
しよりは時間を確認すると、荷物をまとめて、「行きましょう」と発言する。
「わかった」
俺はそれについて歩く。
「しより、私は先に帰っておくね」
「うん!」
俺たちは、しよりがそう言うと教室を後に生徒会室に向かった。
※
「(あの二人の方がお似合いだと私は思うけど……)」
かおりの呟きは、其処にいた秀太にしか聞こえなかった。
「(俺もそう思う)」
※
「「「失礼します」」」
偶然途中で、出会ったしずくと一緒に俺たちは生徒会室に入る。
「はーい。いらっしゃい。しずくちゃん、しよりちゃん、英治くん」
待っていたのは花音先輩とリーナ、風紀委員の委員長である品川薫、そして教師の長友先生の四人だった。
「じゃあ、始めましょうか。3人とも座って」
俺たちは言葉に従い、いつもと同じ席に座る。
「花音先輩、結城先輩達はいいんですか?」
しずくがそう聞くと、答えたのは長友先生だった。
「あぁ、問題ない。今日集まってもらったのは他でもない前回の襲撃事件の事だ。風紀委員の接触者とは話はした。が、装束相手に善戦をしたのは君達だけだ。言ってしまえば君達が居なかったら、事態は悪化していたといえよう」
長友先生が言いたいのは、接触者の一員である俺たちから話を聞きたいと言う事なのだろう。
其処からは情報の再確認や、他言無用との事や、どう対処したなどと言う事を聞かれた。
場所によっては、無線やカメラが機能していない所もあったらしい。
街であれば、カメラのハッキングなど簡単に済ませれるのだが、セントチュアリーとなれば別だ。
セントチュアリーなどの国立科学魔法高等学校には、研究結果などの非公開の情報があるため、相当厳しくセキュリティが付いている。
特に図書室や、実験室近くなどの監視カメラは、魔法でのプロテクトまでされていて、それを越えるのは、一流のハッカーでも難しいだろう。
その予想は合っていたらしく、ハッキングされていたカメラは、プロテクトがされて居ない所だけだったらしい。
それでもハッキングは困難を極める為、攻撃を仕掛けてきた相手は、かなり絞られるらしい。
「分かった。今日のところはこれで良い。もしかしたら、また聴くことがあるかもしれないが、その時はまた。ああ、あと、須田。魔法の件についてだが、成長途中の中学生なら発現する可能性がある。分かってはいると思うが、遅く発現したからと言って特別なわけではないからな」
長友先生はそう言うと、生徒会室から出て行った。
「(最後、感じ悪かったね。英治はそんな事しないのに)」
しずくは、俺だけに聞こえるように小さく呟く。
流石に、2000年を跨いで転生した奴なんて、俺とミーシャ以外いないと思うが。
俺はそう思うと、ほんの少しだけ笑みを外に零してしまった。
「(どしたの?)」
「(ううん、何でもない)」
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