第9話

「あと少しで、2年生の教室だっ!」


 俺は、階段を駆け上がりながら独り言を喋る。


「きゃあ〜!!」


 俺が階段を全て上がる前に、女の子の叫び声が聞こえる。


 俺が階段を全て上がり、悲鳴が聞こえた方の廊下を見るとそこには、真っ黒の服を着た大柄の男と、白い装束を着た人が何人かで囲んでいた。


 白装束を着た人達は、全員顔を隠している為見えない。


 黒い服を着た男は、しより先輩の顔を掴み、地面に叩きつける。


 俺が白装束にみつかり、大柄の男に報告をされると、しより先輩は拘束魔法によって、身動きを取れなくされる。


「オイオイ。また、魔工科かよ!なんでこうも、戦闘向きの魔法科が来ないのかなぁ?今年の生徒会は、魔工科しかいないのか?」


 男は生徒会の腕章と、右肩の魔工科のエンブレムで、そう理解したのだろう。


「それは、どうかな?魔工科だからと言って舐めてもらってもは困る」


 俺は、再び光学迷彩を起動したバロットを、白装束にぶつける。


「グハッ」


 加速を掛けて、ぶつけた為かなりの勢いで後方へと吹き飛ぶ。


「なっ!?その大量の魔力、お前魔法使いか?」


「さて、どうだろうな。的に教えてやる義理はないから諦めるんだな」


 俺はそう言うと、今度は、バロットを男にぶつけた。ー否。しようとした。


 男は、バロットを右腕でで受け止めてしまった。


「残念だったな、お前の見ている方向でどこから攻撃が来るか簡単にわかるんだよ」


 俺は、受け止められたバロットを自分の近くに移動させて、光学迷彩を解除する。


 光学迷彩を付けたまま魔法を使ってもいいのだが、俺が何処にあるか分かった方が、扱いやすいからという理由で光学迷彩を解除した。


「バロットか……。おっと思い出したぞ、飛び級生だな、全く興味がなさすぎて忘れとった。魔法科特進の方は、気を付けておけと言われていたが、魔工特進の方も危ないなら言っておけよ」


 男は、誰か分からない人への愚痴を言いながら、戦闘の体制をとる。


「最初っから全力でいかせて貰う。七十五式展開っ!」


 俺がバロットに手をかざし、そう言うと真っ黒のCの形をした物が飛び出る。


「撃てっ!」


 ドドドドッッッ!!


 俺がそう叫ぶと、30センチほどの長さのミサイルが四発撃ち出され、ミサイル自ら男たちに、向かって飛んでいく。


 ミサイルが、男たちに当たると内蔵されている魔法陣が発動して、対象としたものだけを巻き込む爆発が起きる。


 煙が、晴れると其処には、誰一人と掛けずに、無傷で立ってるいる白装束たちがいた。


 白装束たちをよく見ると、魔法を使用した時に少しの間残り続ける、魔術痕が残っていた。


「まさか!?反転の魔法陣が!?」


 反転とは、魔法陣専用の魔法で、魔法として使用することが今のところは不可能の一つだ。


 反転を使用すると、魔法全般に逆向きの力を加え打ち消すことが出来る。


 使用上の注意として、その魔法を発動するために使った魔法と、同じ量の魔力を使わないと打ち消せないため、相手の方が魔力が多かったりすると、ほとんど機能しない。


 俺の使った術式はかなりの魔力を消費して行使する魔法の為、それを四人が自力で、打ち消したとすれば、白装束の方も相当な魔力の持ち主であることが分かる。


「おっと、それで終わりかな?だったらこちらもいかせて貰うぞ、〈ゴースト〉!」


 男は胸の前に手を叩き、そう呪文を唱える。


 〈ゴースト〉の魔法は、幽霊を作り上げてそれを術者の自由自在に動かせる。


 幽霊は術者の身体能力をそのまま反映する為、〈ゴースト〉を使うことが出来ても、魔法使いは体を特に、鍛えていないことが多い為、殆ど人が魔力効率的に他の魔法を極める事が多くなる。その為必然的に〈ゴースト〉を使う術者は少なくなる。


 閑話休題


 男が〈ゴースト〉を使うと、半透明の幽霊が3体出てくる。


 男の体格から見るに、ゴーストはかなりの力を持っていると推測できる為、球体型のバロットを八つに割って、俺の周りをくるくると周回させる。


 周りの白装束も、両手を俺に向けて魔法の発動の準備をするが、男が白装束の前に手を出して、手を出すなと発言する。


「こいつとは、本気でやってみるのが面白そうだ」


 白装束は、手を下ろして後ろに下がる。


「お前とは、サシで勝負するのが楽しそうだ」


 そう言うと、二匹の幽霊が俺に攻撃を与え始める。


 何度もパンチを加えられる為、バロットでの防戦一方となる。


 くそ、このままじゃ、魔力が切れて負けるか。まだ試運転もしてないしあんまり使いたくなかったけどあれを使うか。


 俺は、そう思い腰にある袋の中から、真っ白の刀型のバロットを取り出す。


 鞘から、刀身を取り出し自分の前で構える。


「まだ持っていたか。やっぱり面白そうな匂いがしていたんだよお前」


 俺は刀が使えない。てゆうか多分剣とかその辺全部使えない。これは刀の形をしたバロットと言うだけであって、本来の刀の使い方とは大きく違う。


 このバロットは殆ど、形はどんな形の物でも変わらない為、刀の形をしている必要はない。刀の形をしているのは、ただの格好いいからだ。


 俺は笑みを浮かべると、刀を割る。ー否正確には、刀が数十の小さい破片に割れた。


 その割れた全ての破片が俺の周りを衛星状にくるくると回る。


 実戦で、使ったことどころか、試運転もしていない為、思ったよりも魔力の消費が高くなってしまった。改良が必要だな。

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