第6話
4月の最初に行われた入学式から、二週間が経った。
しずくは女子テニス部に入った。
体格的な問題で難しいって言われたのに物好きな奴だ。決して声には出さないけど。
俺のクラスの奴らも、それぞれの部活に入り活動を始めているらしい。
らしいというのは、クラスメイトと全くコンタクトを取れていないからだ。正確には取っていないというのが正しいが。
この二週間は何事もなく、普通の学校生活を送れていた。
※
「五月から一年生も委員会が始まります。特進クラスは人が少ない為、全ての委員会に平等にという訳にはいかないので、生徒会や、風紀委員などを中心にして、入って欲しいです、皆さんと端末に委員会の表を送っておきますので、明日の朝のホームルームまでには決めておいて下さいそこで発表をします」
帰りのホームルームに突然の告白をされて、そのまま解散となった。
「英治、なんの委員会に入る?」
「そんないきなり言われてもな。まぁ、明日の朝まであるから、決められるんじゃないか?」
秀太には俺の事を英治と呼んで欲しいと言ったので俺も秀太と呼べと言われた。
「そうだな」
この委員会の決定が、波乱を起こす事を俺はまだ知らなかった。
※
「英治、委員会どうするの?」
部活を終えて、汗を掻いているからという理由で、シャワーを浴びて来たしずくに聞かれる。
表に書かれている委員会は、全部で5個あって、一つのの委員会につき二人が担当に着くようだ。
内容は、『生徒会』『風紀委員会』『体育委員会』『放送委員会』『図書委員会』と書かれていた。
「しずくは何にするんだ?」
魔法特進で配られた物も同じ委員会が書かれているらしい。
「私は特にないかな」
「俺も無いな、成り行きで良いか」
俺が言いたいのは、別に何でも良いから余った奴やるという事だ。
「そうだね、余った奴でも良いかな」
俺はソファーを立ち上がり、キッチンの方に移動した後、お皿を持って移動する。
「あれ? 今日は英治が作ったの?」
「そうだけど、別に変なもの入ってないからな」
しずくが少し顔を歪めたので、俺はちゃんと作ったよという事を伝える。
その顔の歪みの理由は、自分が作れなかった事と、英治が作ってくれたご飯を食べられるという心の矛盾が、生み出したものだという事を英治は知る由も無い。
※
「英治、委員会決めたか?」
秀太は、椅子に対して逆向きに座り俺に話しかけてくる。
「決まったぞ、何でも良いという答えで」
「……。英治らしいと言えばそうだけども……」
朝のホームルームが始まり、昨日の委員会の表に名前が入ったものが端末に送られる。
「………」
俺は、委員会は何でも良いと言ってしまった為、他の人の意見が優先されるので、自業自得ではあるけれど、『生徒会』とか俺が一番やりたく無い物になった。
各委員会の人員はこうだ。
『生徒会』→須田英治・真野しより
『風紀委員会』→天星嶺二・杉田なつき
『体育委員会』→橋本雄牙・真野かおり
『放送委員会』→白穂清あずみ・鳥島秀太
『図書委員会』→後藤真梨・佐藤愛菜
という形だった。
俺としては,自己紹介で読者が好きだと言っていた真野妹が図書委員会に入っていないことが少し驚いた。
「この五つの委員会は今日の放課後に集まりがあります。忘れないように各教室に行って下さい」
※
授業の間の休み時間や、弁当の時間などで真野妹と喋る機会はあったが、結局喋ることはなく、6限目が終わった。
帰りのホームルームが終わり、委員会の教室に移動となる。
俺は、真野妹と全く関係を作ら無かった為、お互いバラバラに移動する事になった。
生徒会室の扉の前でにつき、手を掛け開ける。
「えっと……。君は、須田英治君だっけ?」
いきなり名前を呼ばれて俺は少し驚く。
首を傾げて、顔に人差し指を立てて聞いてくる、その声の持ち主の顔を見ると、何処かで見た覚えがある顔ということが分かった。
「はい、そうですけど。あなたは?」
「あら、ごめんなさいね。私はセントチュアリー生徒会長の高野花音です。君も、一度見たことがあるでしょ? 入学式の挨拶をしたんだから。取り合えず宜しくね」
生徒会長なのに割とフレンドリーに話しかけてくれる。高野先輩。
自己紹介をされて、その顔をどこで見たのかを思い出した。
確かに俺は、この高野先輩を見たことがあるけれど、それは高野先輩が生徒会長として、舞台に立ち演説をしていたからであった為、完全に一方的なものであったと俺は記憶している。
「はい、よろしくお願いします」
俺はそう返事をすると、生徒会室の中央にある机に座るように言われた。
その席には、2000年ぐらいの時に日本の国会で使われていた、あの黒い三角の棒に白く名前が彫られている奴に、似たものが倒されて置かれていた。
俺は、今日の朝に決まったばかりなのに用意ができていて凄いなと、素直に感心をした。
そんな事を考えていると、入り口のドアを開けて、先輩達が入ってきた。
「おっ、こいつが新人君か、どっかで見た顔だなぁ……。あっそうだ! 思い出した、君は工特の飛び級生か!」
この先輩は、金髪碧眼でかなり元気だと思われる女子である。
「リーナ。英治君いきなり過ぎて少し引いちゃってるから落ち着いて」
「ん? 新人君引いてる?」
ここは本来なら、引いてないなどといった方が、好感度は上がるのかもしれないが、生憎として俺は中学生である。
それを言い訳にしながら俺は素直に引いているという事を伝える。
「だって、引いちゃってるって新人君」
笑いながら、リーナという先輩に対して、高野先輩がそう言うと、リーナ先輩は謝ってきた。
反省はそんなとしてなさそうだから、またするんだろうけど。
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