第2話

 今日は国立科学魔法高等学校セントチュアリーの入学式だ。


 この学校の入学式は、全校生徒で行われる。入学式は順調に進み新入生代表挨拶となる。


「新入生代表挨拶。魔法特進クラス『柏木しずく』さん。魔工特進クラス『須田英治』さん」


 俺の名前と、幼馴染のしずくの名前が呼ばれる。


「「はいっ!」」


 身長的に一番先頭の席に座っている俺たちは、そのまま舞台の前の階段の前で練習通り、しずくと同時に礼をしてから上がる。


 そのあと、舞台の中心にある校長先生が詰まらないスピーチをする、あの教台の前に立ち再度礼をする。


「今回の新入生代表……」


「知ってる、飛び級なんだろ」


「それだけじゃないんだ……」


 等と言った声が聞こえてくる。もともと予想はしていた事なので、俺達はそれに動じず、そのまま続ける。


 背丈的に俺たちには、教台は高いため教台の前に準備されていた、踏み台をしずくが上がり、俺その右後ろに休めのポーズで立つ。


「先輩方、一年生の皆さん。魔法特進クラスの、柏木と申します」


 あっさりと、しずくの挨拶が終わり俺の番となる。


 礼をして降りてくるしずくは、俺に対して頑張れと言わん限りのガッツポーズをする。


 もっとも俺以外には見えていないだろうが。


 俺はさっきしずくがした通りに礼をして踏み台の上に立つ。


 多分しずくは、原稿を暗記していると思うが、俺はそんなことは出来ない、とゆうかしたくない。そう言う事で俺は、耳の後ろに骨伝導を使ったイヤホンをつけてそれを復唱する。


『先輩方、一年生の皆さん』


「先輩方、一年生の皆さん」


『私達は今日からセントチュアリー生に成ります』


「私達は今日からセントチュアリー生に成ります」


 そうやって何事もなく、挨拶の原稿を読み終える。


『セントチュアリー生の誇りにかけて、正しい生活を送りましょう』


「セントチュアリー生の誇りにかけて、正しい生活を送りましょう」


 俺達は、登ってきたように席に戻る。俺はイヤホンを外してポケットにしまう。ここでキョロキョロとすると目立つので、耳を掻いたフリをしてとった。


 入学式が終わり、俺達はそれぞれのクラスに戻る。


 魔法科と魔工科は別棟であるため、別々の出入り口から出ることになる。


 入学式が行われていた体育館から教室に戻り、今まで張り詰めていた緊張がプッツリと途切れる。


 自分の席でため息を吐き、机にぐったりとなる。


「大丈夫か? 須田」


「あぁ、一応な。でもおかしいだろ。振り向いたら小学生の中1に、何させてるんだっつうの」


「でも須田は飛び級をしたんだから、高1と変わらんぞ」


「そういう問題じゃねぇ。自分でゆうのも何だが、俺が評価されたのは魔工についての知識とか諸々であって、人間性じゃねぇ」


「うまく行ったんだから良いじゃないか須田」


 椅子を逆向きに座り、俺の話に付き合ってくれているこいつは、今日知り合ったばかりだが、中学生の俺に合わせてくれている優しいと思われる。「鳥島秀太」だ。


 デジタルと魔法によってハイテク化されて、必要は無くなったが、なぜか残り続けている風習の内の一つである学校。


「入学式お疲れ様でした。特に須田くん良く頑張りました。とりあえず、渡さなければいけないものがあるので、座ってくださいね」


 入学式だからという理由で、正装をしているであろう、この女の人が俺たちの担任なのだろう。


「これを皆さんにどうぞ、使い方はまた後で説明します」


 そう言って、クラスの10人にタブレットを配る。こういうのは、魔法の得意分野ではあるのだが、魔法特進には魔法の講師を、魔工特進には、魔工の講師を付けるのが当たり前のため、この人は魔法を上手に使えないのだろう。


 それでも他のクラスは、一クラスにつき30人ほどの人がいるらしいが、このクラスは特進クラスであるゆえ人が少ない。それでも、今年の魔工特進クラスの人は多いらしい。


「そのタブレットは学習は勿論のこと、魔法が使えない人でも、その人の持つ魔力をそのタブレットが代行して、魔法を使えます。それでも、自己防衛用の簡易的な魔法しか使えないので気を付けて下さい。そのタブレットは、電気でも動きますが、一応魔力でも動きますし、さっきの通り魔法を行使することもできますので、負担にならない程度に魔力を充電しといて下さい」


 その説明を受けて、俺はタブレットを解体をしてどう改造してやろうかと、そんな事を思っていると、その事が顔に出ていたのか、指摘をされてしまった。


「須田くん、解体してはダメですからね。小学校から報告は来ていますので」


「……全然解体なんかする気は無いですよ。ちなみに小学校からの報告と行くものは?」


「間があったのは気になりますが、それなら問題ないです。報告の方は一部をいうとすると……」


 そう言って、タブレットを先生は操作する。


「えっと、小学校3年生の授業で貰った魔法と科学の関わり合いの補助教材を、授業中ずっと弄り続けて、麻痺の魔法が付与された、弓矢のようなものを作ったとか。それで、友達の女の子が……」


 俺は、ちゃんと伝わっていることに安堵しながらも、誇らしげにしていると、その先の話を離されそうになるので、全力で阻止する。


「ちょ、ちょっと待ってっ! それ以上はっ!」


「あっ、ごめんなさい。これ以上はやめといたほうが良いわね」


 潔く言うのをやめてくれてホッとする俺に対し、鳥島は気になるようで聞いてくる。


「言うわけないだろ」


 俺がそう言うと残念そうに、再び前を向く鳥島であった。


 ちなみに友達というのは、幼馴染のしずくの事で、内容については、しずくが髪の色が原因で、クラスのいじめっ子たちがしずくに対して「生意気だ」とか言って魔法を行使しようとして、

 それに対して、「そんなの関係ないでしょっ!」と言って、相手の魔法なんて比じゃないぐらいの魔法を使おうとしていた場面に、

 俺が強い魔力を感じて、その場面に出くわしたので、授業で作った麻痺の付与された、痛くない矢を持ち主の魔力の分だけ幾らでも使える魔道具の試験運転を兼ねて三人に使った時に、

 思ったよりも痛かったらしく、骨を骨折してしまい、それで怒られたという事だった。骨の方は、しずくが治してくれたから、そこまで怒られることはなかったけれどやはり怒られるものは怒られるのだ。


 内容を聞くとなんだたったそれだけかと、言われそうだが、あまり人に知られたくないものは知られたくないのだ。


「そう言えば、遅くなってしまいましたが自己紹介をしないとですね、私はこの科学特進クラスの担任と魔工を担当することになりました。『本藤真知子』と言います、宜しくお願いします」

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