あの日から変わったのは僕だった。

MasatoLa

一話完結

楽しければ良いのだろうか。幸せって何なのだろうか。


よく笑う人だった。泣き顔が、この上なく綺麗な人だった。

僕が21になった年、もうすぐ22が終わる女性を振った。

200日記念日の数日後のことだった。

結婚だって考えていた。


何が悪かったとかじゃない。

ただ、変わってしまっただけ。

互いが互いに理不尽を感じて、耐えられなくなっただけ。


楽しければ良いのだろうか。幸せって何なのだろうか。


例えばこのまま君といたとして、

僕は幸せになれていたのだろうか。

君は幸せになれていたのだろうか。


傷つけて、傷つけられて、一番大切な人を一番悲しませて。

そんなことの繰り返しのどこに幸せを見出すのだろうか。


電話の向こう側で聞こえる泣き声は、いつも綺麗だった。

映画で使えてしまえそうなくらい純粋で、僕の妹よりも年下に思えた。


間違ってなかったよね。ここで終わるのが正解だったよね。

まだギリギリ良い人だったよね?


あんなに好きでいてくれる人に初めて出会った。

あんなに僕を困らせたのも君だけだったよ。


人が苦手な僕でも君に惹かれて、好きになって、将来まで考えた。

もう二度と出会えないんだろうな。君にも、君みたいな人にも。


毎日笑顔が絶えなかった最初の数ヶ月は一瞬で、すぐに喧嘩が始まった。

だんだん思うことも増えてきて、受け入れることも難しくなって。

それでもずっと引き留めてくれていた。

いつも我慢させていた。


ある日から、「あの時は」とか、「前までは」なんて言葉が増えた。

後悔したり、怒ったり。「何で?」が君の口癖になっていた。

意見はいつもすれ違うのに、「変わっちゃったね」と二人して同じことを思っていた。


「もういいや」も増えてきた。

諦めさせる回数が増えたかと思えば、

また泣かせてしまう回数が増えていって、

気づけば毎日泣かせていた。

電話の向こうではまたもや泣いていて、

涙が出きった後の「ごめんね」は

なんだか薄っぺらく聞こえてしまって。

また明日もこうなんだろうなと、

変な予知能力さえついてしまった。


最初は夢を応援してくれると思ってた。

だから付き合ったんだ。

少しずつ増えてくケンカや、

恋人として求められることが、

いつしか夢の妨げにしか感じれなくなってしまった。


きっと、あの日から変わってしまったのは僕の方だった。


楽しければ良いのだろうか。幸せって何なのだろうか。



MasatoLa

   




   

  

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