第六話 男湯いい湯だな
脱衣所も初老から老人が多く、若い男性は少々。ロッカーはいい高さの場所は限られているため互いに離れる。
さっさと脱いだ二人は入口で落ち合う。シバは何もまとわず、湊音は下半身は白いタオルで隠す。ほとんど男湯では隠すものはいない。
「そんなに恥ずかしいのか、自慢してもいいんだぜお前の」
「自慢とかそんなんじゃないし。そっちじゃなくてさ、毛のほう」
湊音はシバの方をあまり見ないようにしているがメガネを外したためあまり見えないようだが。
「毛くらいないやつだって他にいるし気にすんなよ」
「気にするって」
「俺も一時期なかったけど警察学校に異動したから脱毛する暇もないしやっぱ自然のまんまでいいかなぁって」
「もう毛の話はやめよう……」
「お、おう」
かけ湯をして一番近くの風呂に入る。
「はぁああああああああ」
と同時に声が出る。
「さいっこう」
「だね。しかも前よりも見晴らし良くなってて……ねぇもうすぐに露天のほう行こうよ」
「ういっす、じゃあ俺壺湯行くわ」
ここの温泉は露天風呂がメインである。自然の中にできた温泉。内湯もいいのだが外湯、露天風呂の広さはとてつもなく最高である。
早速壺湯に向かった二人だが老人たちがドボンと顔を赤くして3つあるツボに浸かっている。まるで蛸壺のタコのようである。
「まぁあくまでまとうか。それになんかリニューアルって書いてあったからあっちの奥の方に行こうよ」
湊音の無邪気さにシバはオウオウと乗り気になる。久しぶりの寮以外の風呂場というのもあるだろう、天気も程よくいい。
炭酸湯、シルク風呂、源泉かけ流し。色々とある。その中でも立ち湯が人気のようだ。
「気持ちいなぁーあったまるぅ」
「湯冷めしにくいって書いてあるぞ」
「あ、さすがシバ。目がいいね。読めないよ全く」
「相変わらず視力はいいけど老眼きた」
「うわぁ」
「何だようわぁって。近眼は遅いらしいけどお前もいつかは来るぞ」
「怖い怖いー」
と会話も弾むし体も温まる。ふと目をやるとサウナコーナーがある。新しくできたのか他のところに比べきれいであり、何人か出入りがある。
「サウナねぇー整うとか言うけどさぁ俺にはわからん」
「僕もすぐ熱くなるし狭いから嫌だ」
「わかるわかる……熱風なんてもう浴びたくないわ」
とシバが言うのも彼が刑事時代に爆破事故に巻き込まれ半年近く入院したことが会ったのだ。それをきっかけに刑事もやめたと言っても過言ではない。彼の体には刑事時代にできた怪我のあとが無数にある。別に彼自身は気にしておらず勲章と言っている。
「……本当生きてるって奇跡だね、シバ」
「まぁなぁー」
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