短編集

第25話 ソフトクリームの機械が壊れて全然止まらない1

 これはまだ湊音が李仁のお店で働いていた時のこと。

 金曜日の営業も終わりスタッフ総出で机の配置を替えていく。


 業者も入り普段使わない器具も運び込まれる。


 ジュリが一つの装置を置くと湊音が目を輝かせる。

「わー、これって!」

「子供たちが自分で出来るソフトクリームマシーンよ」

「子供達もこれ大喜びだよ、ねぇ李仁!」

 子供のように目を輝かせる湊音のところに李仁がやってきた。


「そうね。しかも新しい機械だから扱いやすいと思うけど」

 普段毎月2回子ども食堂になるこの店だが明日明後日は併設する市役所のお祭りともあって連動して子ども食堂祭りをするのだ。


 するとそこに……。


「おいっすー!」

 とやってきたのは冬月シバだ。他県の警察学校で仕事をしているのだが手伝いのために駆けつけてくれたのだ。

 Tシャツにチノパン、もう気合十分。

 その姿を見て湊音は少しドキッとする。

「おう、湊音」

「うん」

「明日は剣道部の子達もくるんか?」

「もちろん、もちろん。練習休みだけどシバが来るって言ったらやったー! って」

 少し前まではシバも剣道の指導をしていたが久しぶりの教え子との再会をすごく楽しみにしているようだ。どちらかといえば湊音がシバと会うのが楽しみのようだが。


「へー、ジュリがメールで言ってたソフトクリームマシーンってこれなん?」

 シバも興味津々のようだ。

「そうそう。厨房のソフトクリーム機は結構方がいるからね」

「僕もこないだ厨房のでソフトクリーム作ったらいつまでも止まらなくて……李仁に助けてもらったよ」

 その姿を想像したシバは笑った。


「お前が困ってそうな顔、すぐ思い浮かぶ」

「笑うなんてひどいよー」

「へへへ」

 とシバと湊音のいちゃついてるところにジュリが割り入る。


「シバも笑ってる場合じゃないわよ。あんたも忙しい時には大人用のソフトクリーム出してもらうし、この子供用ソフトクリームのサポートしてもらうからね」

「へいへいー、じゃあまずその難関のソフトクリームの機械とやらやってみようかなー。聞いてたら甘いの食べたくなった!」


 ジュリがシバの頭にチョップした。

「バカ! まずは配置換えの準備しなさい! 料理とかのレクチャーはそれが終わってから!」

「はーい」

 湊音は笑うとシバが笑うなよってまた戯れる。


「いちゃつくな! さっさと体動かせ!!!」

 ジュリの雷が落ち、彼の指導のもとサクサクと店内の配置換えは終わった。




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