第19話 近江神宮とお守り

 近江神宮は2日目泊まる湖西のホテルまでの道中にあった。


 近江神宮での参拝を終えてから車に戻り、またジュリからのLINEが湊音のところに。

『もう家に着いたっ!』

 とシバがジュリの部屋であろう部屋の中で寝てる姿を添えて送ってくるのはどうでも良いと思いつつ。


「あらー、もう着いた? 早いわねー」

「シバが帰り運転してたみたい。だから今寝てるって」

 ふぅん、と李仁が言う。あまり自分の口からシバの名前を出したのがいけなかったかなと湊音は思いつつ。


 先ほど買ったお守りを出した。

 青くキラキラしたお守り。そこには「ときしめす守」と書いてある。


「それすっごく綺麗よね」

「うん、息子にって」

 湊音には離婚した妻との間に一人息子の美守みもりがおり、もう小学五年生である。

 湊音が指導する剣道場に通っており、時に湊音や李仁と共にご飯を食べてもいた。

 しかし今年から美守は中学受験のため剣道は月に数回しか通わなくなり、練習が終わってもすぐ塾に行くため一緒にご飯を食べることは無くなった。


「美守も大変だけどさ……彼の思うままに生きて欲しい」

「勉強勉強ばかりですものね。子ども食堂に来ていた子達も急にパタリとかなくなったかと思ったらお受験とか塾とか。みんな忙しいのよね……」

「学芸員や古文書の研究をしたいってね。あと教師だけは嫌だって言われたよ」

 湊音は笑った。実の所湊音の父親も教師であり、元妻も教師であった。美守も教師を志したら3代で教師である。


「まぁいいじゃない。どうなるかはわからない、人生ってそういうもんよ」

 色々と渡り歩いてきた李仁がそういうのも感慨深い。


「もしずっと結婚したままだったらもっと口出ししてたと思うけどね。うちは父さんがずっと教師になれ、とか言ってたからなってしまったわけで」

「一緒だったらそう言ってた、てことかー。ミナくんがガチガチの父親だったらどうだったんだろう」

「ねー……」

 湊音は李仁の手を握った。


「もしもの話よりも今、こうして李仁と一緒にいれることが幸せだ」

「あら、ミナくん……」

 2人は見つめ合い、手を握る。


「そろそろチェックインの時間だから行こう」

「そうだね……李仁も運転疲れたでしょ? 早く横になってね」

「お気遣いありがとう」


 車は湖西のホテルに向かった。

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