第16話 ジュリからのマウント
少し石山寺まで距離がある。暑さのためやはり体力の自信のある2人でも車内の冷房、水分補給していても疲れてしまう。
途中道の駅で車内で食べる昼ごはんを買いに行く。
道の駅の中にコンビニがあり、対象の弁当を買うとお茶がついてくるというラッキーなことに巡り合う2人。
「ラッキーだわぁ、お得じゃん」
「うんうん、コンビニの弁当は高いイメージだけど太っ腹だねぇ、ラッキーラッキー」
再び出発。運転している李仁のことを気を遣いながら湊音は色々話をしていく。
時にお茶の蓋を開けて渡したり、おにぎりを渡したり。
しかしながら清水の話をしてこない湊音に忘れたのだろうかと思いつつもそう思うのも李仁は聞いて欲しいという気持ちがあるようだが……。
「あっ、ジュリからLINE来た」
李仁のスマホを見る湊音。
「あっちは今頃彦根かしらー……てことは」
ちょうど赤信号のところで湊音はLINEの添付された画像を見せる。
「ひこにゃんに会ったって! いいなぁ……」
ジュリが満遍の笑みで彦根のご当地キャラ、ひこにゃんとの写真。しかも何枚も連続で。
「ぐあーっ! こいつったらいつもマウントとるのよ……今回はひこにゃんマウント!!!」
「僕は撮れなかったもんねー。グッズもたくさん買ったらしいよ」
「グッズはわたしも買ったわよー! もー、適当に返信しといて!」
「はいはいー」
仲がいいのか悪いのか、ジュリと李仁は後輩先輩の関係だが今ではプロデューサーとその下で店主として働いてるわけで立場も逆であることも少し気にしているようだ。
湊音は送られてきた写真見て気づいたのはシバとの写真がない。だがひこにゃんと一緒に写るシバはありえないだろう、と湊音はわかっていた。
すると湊音のスマホにもLINEの着信があった。
『めちゃくちゃイケメンのシバちゃん』
という文字と共に彦根城をバックにシンプルにピースするシバの写真が送られてきた。
手足が長く、腕を思いっきり広げて城の大きさを体いっぱいで表している姿の写真。
その腕で何度も抱きしめられた……ことを思い出す湊音。
シバは今も警察学校で剣道を指導し、さらにガタイがよくなっている。湊音と共に高校生や小学生に剣道指導していた頃よりも。
なぜジュリは湊音にこの写真を送ってきたのだろうか。
「そいや琵琶湖は遠くからしか見てないけど近くまで行く?」
と李仁の問いかけに湊音はハッとして李仁の方を見ると奥には琵琶湖が見える。
「近くまで行けるの?」
「行けるわよ」
「……別にいいよ、車から見るだけでいい」
「あら、そうー気がそぞろね」
李仁は運転に集中しているものの、声色と態度で湊音の心情がわかったようである。
「少し寝るね、ごめん」
「いいわよ、私も石山寺着いたら寝るわ」
「うん……」
しばらく車内は静かになった。
だが気持ちがそぞろだったのは湊音だけではなかった。
李仁は湊音のことでなく、違うことで。
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