第12話 湊音とシバ
食事やお酒が運ばれ4人は乾杯をする。こうして4人で食事するのも半年ぶりである。
「もっと早めに旅行してること伝えればよかったかしらー」
「そうね、まぁこうやって会えたしね、よかったわよー」
李仁とジュリの陽気さがあると場の雰囲気も変わる。
「俺さ、ひっさしぶりの酒なんよ」
と笑いながらシバはビールをグイッと飲む。
互いの行った先々の話もしながら、近江牛のビーフシチューや近江野菜など地元の食事を味わう。
「明日はどこ行くの? 私たちはもう帰るけどね」
「一応明日は湖西の宿に向かって観光予定ー」
「ひこにゃんに会いたいわー」
「わたしたちは会えなかったのよ……」
「うわー、ぜったい会う! グッズも買うって決めてるの!!!」
「ジュリ……気合い入りすぎ。意外と他のところでもひこにゃんのグッズあるけどさー」
ジュリと李仁がワイワイ彦根のご当地キャラひこにゃんの話題になっている間に湊音とシバは黙々とご飯を食べる。
湊音からはなかなか話すきっかけがつかめずただ食べているようだ。
それを察してシバが
「今日も暑かったなー」
と。湊音はそれにうなづいた。
「仕事、休んでるってな……ジュリに聞いた」
「うん……やめて早々情けないよ」
湊音は苦笑いする。市役所職員を辞めてからすぐ李仁の店を手伝っていた湊音だが公務員時代とは違ってハードだったようだ。
それと同時期に辛い過去のことが引き金になってしまった。
「情けなくないだろ。ぶっ倒れる前に気づけたからいいんだよ」
と言いながら湊音のグラスに水を注いだ。
「ありがとう。シバはもうすぐこっちに帰ってくるんだろ?」
「そうだ。子供たちの剣道指導も再開できるから楽しみだよ。湊音の分まで頑張るから」
「助かります……」
地域の剣道場の師範を2人でやっていた。湊音は剣道の指導も今は休んでいる。
「何敬語使ってるんだよ。しばらくはゆっくりしろ。休めるうちに休んでさー」
「ありがとう……」
「……また俺のところに来いよな」
「うん……」
そう言われて湊音はほっとした。心の拠り所としてシバと関係を持っていたからだ。
「あー、早く旅行知ってたら同じ部屋とって4人で……やりたかったなぁ」
とビールをなんで上機嫌のシバは笑いながらそう言う。ジュリと李仁は変態! イヤだーとヤイヤイ騒ぎ立て湊音は相変わらずのシバに少しホッとした。
ジュリと李仁が盛り上がっている傍ら、湊音が先にトイレに行くとその後にシバもついてきた。
そしてひっそりと2人抱き合いキスをした。
「戻ったらまた、たっぷり愛してやるから」
「シバのバカ……」
「バカ? そうかな? こうやってトイレに入ってまでキスしたくなるくらい愛おしくなる、バカにさせたのはお前だろ」
と激しくシバは湊音を抱き寄せキスをまたした。音を立てるくらい激しいキス。シバの口の中はアルコールでたっぷりだ。
湊音の目がトロンと蕩ける。
「ああ……本当に4人でホテル一緒だったらなぁ。てか、この後李仁とやるんだろ?」
「うん、するよ」
「あっさり言うんだねぇ」
「てか来る前にしたし」
「どんだけだよ。てか戻らないと……李仁に怪しまれるぞ」
湊音は頷いた。
「……でも、絶対こーしてるってわかってるから。李仁。その方が李仁ものすっごく興奮して激しくなる……酒も飲んでるし」
「お前らどんなカップルだよ、先出るから」
とシバが先に出た。湊音はすごく鼓動が高鳴って体温も上がってることに気づく。
何度もシバに吸われた唇を触れ思い耽る。
「……戻んなきゃ」
と湊音もトイレから出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます