第6話 彦根に着いた!

 そんなこんなで彦根までノンストップで進んで行った。


 道中は社内の音楽を聴いては少し機嫌が良すぎる湊音はノリノリになって歌い出し、それに合わせて歌う李仁。

 場所が近づくにつれて現地の天気やどうやって観光するか話をし、彦根城近くの駐車場に向かう。


 途中多賀大社への案内板もあった。

「彦根城の後にあっちに行けばいいのね」

「うん……なんか多賀大社今日お祭りあるって。……彦根城の近くも……夕方から混みそう」

「あ……それはノーマークだったわ」

「だねぇ」


 行き先は決めてはいたのだが現地のイベントはあまりチェックしないのが2人の旅ならでは、のようだ。


 目当ての駐車場に着き、車から出た2人の第一声は……。


「あっぢいいいいいいい!」



 彦根城まで駐車場から少し距離はあるがまだ車が止まっていなかったところに次々と入ってくるということは人気の場所だったようだ。近くにお手洗いもあり、すぐ歩けば彦根の街中に入る。


 看板には「彦根浴衣祭り」と書いてあり、祭りの準備をしているようだが人はまだらだ。

「きっと夕方には人が多くなるよ。早めにお城行こうよ」

「そうね、ジュースも持ったし……行きましょう」

「暑さにやられてしまわないかな」

「どこも一緒よ」

 と湊音は李仁の格好を見て笑う。アームカバーにサングラス、日傘。


「なによー! 美白第一なんだから。ほら、ミナくんもつけなさいよ……日焼け止めだけじゃ焼けちゃうー」

「日傘はいいけど腕のやつはオバさんみたいで嫌だって前から言ってるじゃん!」

「何がおばさんよ!」

 と少し小競り合い気味に2人は彦根城に向かった。確かにすれ違う人、女性に限らず男性や子供も日傘を使っている率が多くなったと思う湊音であった。



 彦根城敷地内に入ると巨大な石垣、そして奥に進むと受付があり支払いを済ませて先に進むと待ち構えてきたのは坂道。

「杖持ってく?」

 と李仁は湊音に聞く。貸出用の杖棒である。しばらく感動をしてない湊音は体力に自信がないため持っていくことにした。


「なんだったら私がその杖になりましょうか?」

「いいよ、大丈夫」

 と言いながら険しい坂道を見て少しゲンナリしている。まだ彦根城は見えない。


 登っていくにつれて息が上がる湊音。

 ひと段落した坂の上には小さなお土産屋さんがある。そこのベンチで湊音は一旦休憩し、余裕の李仁はお土産を見る。

 ドラマや映画のロケ地になっていたとのことでポスターやサインがたくさん貼ってある。


 そして門をくぐり再び坂を登り、その途中で時報の鐘が頭にジーンときて湊音は李仁にしがみつく。

「大丈夫? 今なら降りれるわよ」

「大丈夫。それにこの時報の鐘は聞けるのは貴重らしい」

「ほぉ、ラッキーじゃん」

「だから頑張れそう」

「無理しないでね」

「ありがとう、李仁」

 2人は見つめ合って微笑み合う。朝がじんわり出てくる。風はたまにある。太陽は日傘でブロックできるがやはり暑いようだ。


 そして……。


「彦根城!」


 ようやく彦根城が見えたのだ。

「着いたー!」

 湊音はバンザイするのだが……。


「って、まだ登るんだよね?」

「そうね、うん」

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