第29話 お姉さんのコスプレ姿
「……じゃあ、とりあえず、一旦一か所に集めましょう」
「はぁ――い♡」
なんだかお姉さんがさっきまでよりご機嫌になっているのはなぜだろう。そう思いつつ、冬物を集めるだけなら楽なので、俺はサクサクと作業を進めていた。
するとお姉さんは隣の部屋にしれーっと入って行ったから、何か用事でもあるのかとそのまま作業を進めていると……。
「ねぇねぇ、なんちゃん!! 見てみてー♡ ハロウィン用のコスプレ♡」
唐突に魔女の格好をしたお姉さんが俺の前に現れた。
(……え、セクシー過ぎん?)
その格好は全体的に黒のレースの衣装で、身体にぴったりフィットして、スタイルの良さが際立ち過ぎているし、胸元とか……開き過ぎている。
「え、めちゃくちゃ似合ってますけど、なんですか、急に!」
びっくりして自分でも顔が赤いのが分かる。
「えっとねー、ハロウィン用に買ったのだけど、ちょーっとセクシー過ぎたから、ボツにしようと思って。でも、誰にも見せないで捨てちゃうのはもったいないじゃん?」
「あぁ、なるほど……?」
「だからー。なんちゃんに見てもらって、供養しようと思って♡ 我ながら、名案!!」
……その、セクシー過ぎてボツにするほどのものを、なぜ俺だけに見せるんだよ、と思いつつ。悪い気はしない。むしろ、いい。もっとやれ。
こんなこと、声に出しては言えないけれど。
――なのに、知らないうちに俺はそんな
「だからねー、なんちゃん、他にも一回着てみたくて捨てられなかった服あるから、見てくれる!?」
お姉さんはそんな事を言い出した。
「え……まぁ、それでモノが減るのなら……それもアリと言えばアリですね」
だから俺は、お姉さんの言葉を容認してしまった。いや、冷静に考えたら、そんなことしてたら作業が捗らないって分かってるよ!? 分かってるけど、仕方ないじゃん。見たいものは見たい。これも男のサガってやつだ。
いつの間にか俺は、『仕事』という免罪符を、ついつい忘れてそんな事を思っていた。すると……
「ねぇ、なんちゃん。レースがファスナーに引っかかってて、脱げなくなっちゃった。脱がせてぇええええ……」
着替えるために隣の部屋に行ったはずのお姉さんが、また戻ってきてしまった。
もう、これ、わざとなの? それとも、ただの天然か??
「もー、なにやってるんですか! どこですか、ファスナー!」
「えっとね、ここ」
……前言撤回しよう。決してこれは男のサガなんかじゃない。仕事だ、仕事!!
俺は精神統一をするためにあえて心に『仕事』だと言い聞かせた。
けど……
なんでよりによって、ファスナーが胸元にあるんだよっ!!!!
しかもファスナーはしっかりとレースに食い込んでいて、なかなか下がらないから、否が応でも 胸元が視界に入る上に、手がどことなく胸元に触れる。
おまけに……この至近距離でのお姉さんの上目遣い。
「……なんちゃん、ごめんね?」
その顔、可愛すぎるからやめて欲しい。
「まったくです。どこの世界に付き合ってもない男に服脱がさせようとする人がいるんですか」
「ちょ、なんちゃん。言い方!! 違うもん。脱がさせようとしてるんじゃなくて、脱げないから脱がせてって言ってるの!!」
「ほら、脱がせてって言ってるじゃないですか。マジで俺以外の男にこんなこと、頼まないでくださいね!? 襲われても文句言えませんよ!?」
だからつい、カーッとなったまま俺の本音が漏れてしまった。するとお姉さんは。
「言わないよー。なんちゃんにしか、脱がせてなんて。だから、早く、脱がせて」
なぜか赤い顔をした上目遣いで、恐ろしく語弊のある言い方をした。
マジでその顔、ドキッとするからやめて欲しい。
そう思った時、なぜかファスナーはスルっと開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます