第16話 やっぱりイタズラ好きなお姉さん

「じゃあ、取り換えましょうか、電球!!」


 抜群にうまい料理を食べて、二人で洗い物もした後、本題に取り掛かる事にした。


「うん! お願いしまーす。♡」


「え? 急になんでも屋さん呼びになるんスね」


 なんちゃん呼びにすっかり慣れていた俺は、妙に違和感を感じてつい突っ込んでしまった。


「えー? うん。なんちゃんは『』、だもんなーって思って♡」


 そして気のせいだろうか。『なんでも屋さん』であることを強調するように言われた気がするのは。


「ああ、まあ、そうですけど……じゃあ、脚立お借りしますね」


「はーい♡」


 基本的に、俺のバイト先であるなんでも屋ナンデーモは、大抵の事はなんでもする代わりに、道具類などはお客さんに用意してもらうのが基本スタイルになっている。

 

 もちろん事前に依頼をもらえばこちらで用意する事もするが、その場合は追加料金をいただく料金体系なのだ。


 そこそこ都会なので車で回ると駐車スペースがない場合も多いし、駐車料金の問題もある。最低限の道具類だけで現場に向かえるこの料金システムのおかげで、次の現場にもスムーズに向かう事が出来るのだ。


「じゃあ、古い電球外しまーす」


「はーい」


 外した電球を受け取るために傍にいるお姉さんに話しかけると、お姉さんも返事をした。


 そして俺が古い電球を外すために両手を伸ばした時、今度はお姉さんの方から話掛けてきた。


「ねぇねぇなんちゃん」


「はい?」


「両手上げてたら、おへそ見えてて可愛い♡」


「なっ。どこ見てんスか!!」


 全く、この人は。やっぱりどこかイタズラ好きなのだろうか。昨日も俺が皿洗ってる時に腰のあたりをツンツンとしてきていたし。


「へへ。触ってもいーいー?」


「だーめーでーすー」


「えー? じゃあ、抱きつくのはー?」


 本当に、どこまで本気でどこからが冗談なのだろう。まぁ、悪い気はしないのだけど。むしろこの冗談っぽいやり取りが、楽しいとすら思ってしまうけれど。


「もう。ダメに決まってるでしょー? ほらほら、古い電球取れたから受け取ってください?」


「はぁーい」


 けれど、もし、俺が『いいですよ』と答えたら、お姉さんはどうするつもりだったのだろう。本当に……抱きついてくるつもりだったのだろうか。


「じゃあ、次は新しい電球付けますねー」


「よろしくお願いしまーす」


 断られてもしょんぼりすることもないし。まぁ、冗談でしかないのだろうけれど。だったら俺も、冗談ぽく聞いてみようか。『もしも俺がいいですよーって言ったら、どうするつもりだったんですか』って。


 そう思って話し掛けようとした時、お姉さんの方から話掛けてきた。


「ねぇ、?」


「はい?」


「もしも、『抱きつかせて』って『依頼』されたら、どーするのー?」

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