第3話 お姉さんからの初依頼

「じゃあ、早速今日の依頼なんだけど……ここの電球、変えてもらってもいいかな」


 お姉さんはまたふんわりと笑いながら俺に言った。


「あ、はい、分かりました。じゃあ、新しい電球をいただけますか?」


「……え?」


 けれど、お姉さんは俺の言葉に固まった。


「…………もしかして…………ない、ですか? 新しい電球」


「うん……」


「………………」


 しばらく変な空気が流れてから、お姉さんはえへっとした顔をしながら間を取り繕った。


「そっかー、電球交換しようと思ったら、新しい電球がいるんだねー。それもそっか。“電球切れてるー依頼しよーっと” って、軽ーい気持ちでそのまま依頼しちゃった。うっかりうっかり」


 そしてバツが悪そうにてへへと笑った。


「あ、よかったら買って来ましょうか? 電球。1時間以内に終われば何をしても料金は変わりませんので……」


 一応提案してみたものの。


「んー? いいよぉ。外暑いのに悪いじゃん。ネットで買っておくから、届いたらまたあらためて依頼するね。もちろん今日来てもらった分はお支払いするから」


 そんな事を言い出したから。


「え、だったら、何か他の作業しますよ? 何かないですか?」


 さすがに何もしないで料金を頂くのもと思って別の提案をしてみると。


「そう? んーじゃあ……ごはん、食べて行って欲しい!」


 お姉さんがキラキラッと目を輝かせて言ったのは、まさかの内容だった。



「へ、ごはん?」


「あ、お腹すいてない? それとも人が作ったご飯とか嫌なタイプ?」


 驚いて聞き返すと、不安そうに聞いてくるお姉さん。

 上目遣い、可愛いな、とかよこしまなことを思いつつ。


「いや、そうじゃなくて……」


 なんて答えたらいいのか戸惑っていると、お姉さんはまた冗談っぽく怒ってみせた。


「あー。私の料理の腕を疑ってるんでしょー。もう、失礼だなぁ。ひとりだと、いつも材料余っちゃうのよ。それに自分のために料理するのって、なーんか楽しくないんだよね。だから……キミが食べてくれたらなあって思ったんだけどな。残念」


 言いながら、お姉さんは少し寂しそうな顔をした。だからなんだか断るのも申し訳ない気分になってしまって。


「そういうことでしたら、喜んで!」


 俺はつい、調子のいいことを言ってしまったんだ。



(……腹、壊したりしないよな)


 脳裏に不安が過りつつ、俺の返事にお姉さんは上機嫌で。


「ほんと? ふふー嬉しい。ね、ね、好き嫌いある?」


 また可愛いキラキラとした瞳を向けて、俺に聞いてきた。


「あ、いや、特には……強いていうならピーマンが苦手で、トマトが好きです」


 すると。


「え、そうなの!? 私と一緒じゃんー。気が合うねっ」


 俺の答えにお姉さんはまたキラキラとした瞳を輝かせて子供っぽく微笑んだ。

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