第2話 お姉さんの部屋

「あれー? 便利屋さん? 初めて見る子だねー。新人さん?」


「えっあっはひ。きょ、今日がはじめてで!! よ、よろしくお願いしますっ」


 あまりに想像を超えた綺麗なお姉さんに驚いて、声が上擦った上に、盛大に噛んだ。


(やべ、噛み噛みだし。恥っず!!)


 心の中で動揺していると……


「ふふふ。なぁに? 緊張しているのー? やだもう可愛い。顔が真っ赤だよー?」


 お姉さんは綺麗な顔をふわっと緩めて、可愛く笑った。


(何、この人。可愛い……)


 見た目の第一印象は“綺麗なお姉さん”なのに、笑うと途端に幼く見えて可愛い。


「あ、す、すみませんっ。き、緊張していてっ」


 ただバイトに来ただけのはずなのに。さっきから初仕事だという緊張とはまた別の緊張をしてしまっていて、妙な汗が噴き出してくる。


「ふふふ。可愛いから許すー。ね、ここじゃなんだし、早速中に入って?」


 そして相変わらず可愛い笑みを浮かべるお姉さんは、開いた玄関扉を手で押さえながら俺に中に入るように促してきた。


「お、おじゃま……しまっす」


 やっばい。お姉さんの前を通り過ぎただけなのに、とんでもなくいい匂いだ。



 言われるがまま、玄関の中に入る。玄関の正面にある壁には超巨大でおしゃれな絵が飾られていて、玄関にある棚にはなんだか高そうなガラス細工やおしゃれに生けられたフラワーアートが飾られている。いかにもおしゃれでお金持ち、という雰囲気。


 なのにお姉さんときたら、だるだるでゆるめのTシャツに、Tシャツの裾に隠れるほどの短パンに生足……という、あまりにもラフな格好。


 部屋に入って行くお姉さんの後ろ姿について行ながら、つい、お姉さんのスラリと伸びた綺麗な足に目を奪われてしまった。



 一人暮らし……なのかな、いや、まさかこんな高級マンションに? そんなことを思いながらついて行く。


 玄関があんなに高級感があっておしゃれなのだから、部屋の中はどれだけおしゃれで綺麗なのだろう。


 いや、案外部屋の中は散らかってたりして。そんなわけないか。


 そんな事を考えながらたどり着いた部屋の中は……



 盛大に、散らかっていた。


 ゴミ屋敷とか、汚部屋、という感じでは決してないけれど、高級そうなバックや、なんかおしゃれな服、そして化粧品の数々と、とにかくものが多い。


 これでは壁一面の大きな窓から見える見晴らしのいい景色も、なんだか高級そうな大きなソファーも、何もかも台無しだ。


 それにしても、明らかに女性の一人暮らし、という感じ。

 男の影は一切感じられない。 




「ごめんねぇ、散らかってて」


 えへへっと笑うお姉さん。


「あ、いえ、あ、ははっ」


 そして、愛想笑いをする俺。



「あー。その顔ー。飽きれてるでしょー。もう。いいもーん」


 そして、冗談っぽくぷいっと怒ったフリだと分かる仕草をしてから、お姉さんは照れくさそうに屈託なく笑った。


 なんなの。このお姉さん。やっぱりやたら可愛いんだけど。


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