第2話 異世界トラベル?トラブル?

 「くそ〜あの女神あくまめ!最初は街の中に転送してくれるんじゃなかったのかよ!」


 女神『アノメ』から受けた話では、この世界に存在する割と大きな街へと転送されるはずだった。


 しかしなんだこの場所は。


 爽やかな風がビュービューと吹き抜けるこの場には建物はおろか人工物すら全く無い。見渡す限りの緑が何処までも広がる大草原だった。


 「旅にトラブルは付き物って言うが…」


 まさか本当に初っ端からこんな事になるとは思っていなかった。


 この世界には"魔物"なる凶暴な生物が出没するって話だし、とりあえず人がいる安全なところに行きたい。

 (魔物は危険だから、くれぐれも面白半分で近づくなと女神アノメにキツく忠告されていた。恐らく俺の性格をんでのことだろう)


 なんてことを考えていたら、目の前の自分の腰あたりまで背丈せたけのある茂みがガサガサと揺れた。


 「嘘だろオイオイ…!」


 野生動物?それとも例の魔物ってやつなのか!?こっちは丸腰だぞ…


 アノメの忠告も虚しく、茂みの揺れは確実に俺へと近づいてくる。思わずゴクリと唾を飲み込んだ。


 そしてそれは、ついに正体を現した。


 茂みから飛び出したのは身体が液体で構成されている前の世界でもよく知られた魔物だった。


 「もしかして、スライムか!?」


 そう、異世界に来て初めて出会った魔物はスライムだった。


 目の前のスライムは粘性でドロドロとした質感。大きさは小型犬ほど、目は無いがこちらの位置を把握しているように感じた。


 さてどうしたものか、スライムと言えども魔物。興味はあれど武器になる物もないし襲われたら非常にマズイ、早く逃げよう!と理性では考えていても厄介な好奇心が顔を出す。


 「触ってみてぇ〜!!!ってまずいまずい。魔物に近寄るなってアイツに忠告されてんだった」


 思いとどまった俺は熊に遭遇そうぐうした時と同じ要領ようりょうで目線はスライムに向けつつ、ジリジリと足を後ろに下げてこの場から離れんとした。

 だがスライムは同じ速度で距離を詰めてくる。


 そんな時、突如として謎の女性の声が頭に響いた。

 

 【スキルツリー『スライム使いマスター』を解放しました。特殊スキル『スライム支配テイム』が使用可能です】


 うおっ!?頭の中にいきなり声がする!周囲にはスライム以外に誰もいないよな、もしかして幻聴…?それにしてはハッキリと聞こえたが。


 唐突な女性の声には大変驚かされた。だが徐々に理解した。


 これはあの女神の言っていた"スキル"ってやつか!?


 だけど『スライム支配テイム』…?スライムてなんかしょぼくないか!?


 これが与えられたスキルを知った俺の第一印象だった。


 ゲームでもテイムってのは普通、ドラゴンとか恐竜みたいなカッコいいモンスターを相手にするもんじゃないの?


 何故なぜアノメがスキルの名前すら頑なに言わなかったのかその理由わけを知った。異世界に来てわざわざスライムをテイムしたがる物好きはそういないだろう。


 「あの女神ぺてんしめッッ!」


 しかし、口では恨み言を言いながらも…心の底から湧いて出た感情は違った。


 その感情、それはこの世界で得た能力ちからへの好奇心だった。


 このスキルとやら、使ってみたい。でもどうやって?


 当たり前だが魔法なんて一回も使ったことがない。だから当然使い方も分からない。


 【いえ、タクミ様はすでに使用することが出来るはずです】


 「え?そんなわけ…あれ?」


 再び頭の中に響いた"謎の女性"の言葉に気付かされた。


 そうだ。異世界に送られた時からすでに。

 普段、呼吸をすることと同じように、既にこの身体からだには能力スキルが身に付いていたのだ。


 そうだ、こうやって使うんだ。


 右手をスライムに向けると大きく息を吸い込み唱えた。


 「スライム支配テイム!」


 かざした右手からは前世で触れたことのない新たな力の胎動を感じた。



 前の人生はバカみたいな死に方をして終わりを迎えた…だが!二度目の人生はこの能力スキルを使って最高に異世界生活をエンジョイしてやる—!



 第二話 完


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