異世界スライムテイマー!錬成した最強スライム達を従えて異世界ライフを楽しみます

3代目尊大大魔王サン🐕

第1話 人は見かけによらないと言うが…

 目を覚ましたそこは、自分と無限に広がる無機質かつ真っ白な地面以外"何も"存在しない空間だった。


 しかし、まばたきをすると目の前にその人は居た。


 まとうは滑らかで純白の布、ブロンド色でシルクのように艶やかな髪、そして彫刻のように整った美しい顔。


 「女神」…その人物を表す言葉はこれ以外に見つからないと思った。その口を開くまでは…


 ◇◇◇


 時間は少しさかのぼってお昼時、俺『月谷つきや 拓海たくみ』は決断を迫られていた。


 今日の昼飯は辛辛からからラーメンの激辛スペシャルMAXバージョンにすると朝起きた時から決めていた。


 俺は自他共に認める大の激辛好きだ。この辛辛ラーメンの新バージョンが出てからというもの一ヶ月以上は飽きることなく食べ続けている。

 

 「でもヤバイよな、流石に…」


 自分の好みとは裏腹に、この一週間感じている謎の胸痛が"限界"を訴えかけているようだ。


 「だけど不思議だ—この激辛スペシャルMAXは拷問のような辛さだが、食べれば食べるほどに味の深みを感じられる」


 拓海たくみは実感していた、「今日食べれば辛味の極地に辿り着くことができる…気がする!」と。


 「誰であろうと俺の開拓精神フロンティアスピリッツを止めることはできない!」


 勢いよく箸を手に取ると、血の池のごとく赤赤としたスープの中から麺を掴んで口元へと運んだ。


 「いざかん、辛味の極地へ!」


 ズルズルズル…ズルズルズル…


 そして辛辛ラーメン完食の一分後、心臓発作によって昇天した。


 ◇◇◇


 「…ん、んぐ、んぐぐぐぐ」


 この時の俺は目の前の彼女が口を抑えている様子を吐き気を堪えているのだと勘違いしていた。


 どこか体調が悪いのか?


 「大丈夫ですk…」


 俺が心配して声をかけようとしたときだった。


 「ワヒャヒャヒャヒャ!!!」


 え、なに…?


「何よwあの死に方wwwあんな死に方見たことないわよwwwププププw」


 どうやら堪えていたのは笑いの感情だったようだ。

 き止めていたダムは完全決壊、目の前で盛大に笑い転げている。


 いや、人の死に方で笑うなよ…まあ、我ながらにバカでマヌケな死に方すぎて怒りも起きないんだが。  

 

 「まったく、この女神を笑い殺させる気?ププw辛味の極地って何よw」


 「まだ言うのかよ、ていうか今女神って言ったか?」


 「いかにも!ププッ私こそが百の世界を統べる!女神『アノメ』よ敬いなさい!w」


 俺の顔を見ると、死に様で思い出し笑いをするような奴が本当に女神なのか?と疑問に思ったが今の自分が置かれている状況から嘘ではなさそうだ。


 「へいへい。で、そのアノメさんは何してくれるわけなんだ?」


 「アノメ"様"ね?まあいいわ、私の仕事は地球で死んだ人間を次の世界に送り届けることよ」


 仮にも神なのにお役所みたいな仕事をこなしてるんだなぁ。

 女神って名乗っているけど、こんな性格だし下の役職に落とされたんじゃないか…?と至極しごく真っ当な考察をする。


 「タクミ、あなた今ものすっっごく不敬なこと考えたでしょ…」


 まずい、ちょっと心の中で馬鹿にしてたのが表情に出てたか?


 「いえいえそんなことないですよ女神様!」


 でも神は神。怒らせてしまったら流石にまずいので首をブンブンと横に振って否定する。


 「本当かしら…?」


「俺のこの目を見てください!嘘をつくような目に見えますか!?」


 ギロリと疑惑の眼差しを向ける女神アノメに対して必死に弁解した。


 「…とりあえず貴方が次に行く世界の説明をするわね」


 なんとか誤魔化せたようだ…


 こうして俺は女神から次に送られる世界?について10分ほど軽く説明を受けた・・・



 「う〜ん、行きたくねぇ…」これが俺の第一の感想だった。

 

 「な、なんでよ!異世界よ?ニホン人はみんなワクワクするって"シゲル"から聞いたわよ!?」


 「誰だよシゲルって…」


 確かに異なる世界へ行くという文言は凄くかれる話である。

 だがしかし、アノメの話からすると文明レベルは元の世界よりも確実に低い。

 

 だとすれば当然その世界には便利な家電はないだろう。灼熱の真夏の夜、エアコンをガンガンに効かせた部屋で食すアイスクリーム。この背徳的はいとくてき美味うまさを知っている俺としては勘弁願いたい。


 異世界転生に対してあまり乗り気ではない俺に見かねたアノメは説得を開始した。


 「一つ言うのを忘れていたけど、あっちの世界にはあるわよ。魔法」


 な、なに—今、魔法って言ったのか???


 俺もドラ○エにしっかりハマった世代ゆえにシンプルな一言が突き刺さった。俺は今でも空を飛び、手から炎を出したいと思っている。

 

 グラついた俺の意思に追い打ちをかけるようにアノメが続けて言う。


 「今なら特典としてえ、特別なスキルを一つプレゼントしてるんだけど」


 「なんだと…?」


 "特別"なスキル?すごいワクワクさせられる言葉じゃねーか…


 「ちなみにそのスキルってどんなスキルなんだ?永遠に消えない炎エターナルファイヤーとか?金を無限に生み出すインフィニットゴールドとか?時間を止められたりストップザ・ワールドとか?」


 「それは…(なんなのよコイツのネーミングセンス)」


 その特別なスキルについて詳しく質問をした途端、アノメの顔に焦りが見え始めた。


 「あっちについてからのお楽しみってコトで…」


 なんだ?急に胡散臭くなってきたな、何故スキルの内容を隠している?


 「め、女神にそんな疑いの眼差しを向けるなんて不敬よ!」


 突如として理不尽にキレ始める女神。


 「じゃあスキルの内容を言えよ!」と圧力をかけるが「それはその…」と歯切れの悪い言葉しか帰って来ない。

 

 このように防戦一方になったアノメが苦し紛れに放った一言。それは思いがけず会心の一撃となった。

 

 「タクミ、貴方の中にある開拓精神フロンティアスピリッツとやらはどこ行ったのよ!」


 うぐっ…!!!!


 海洋探検家であった俺の父親に命名された拓海たくみという名前。この名には未知の海を切り拓くおとこであれという想いが込められているのだ。

 そして『開拓精神フロンティアスピリッツ』という言葉は当然、俺の座右の銘となっている。


 「…ってやるよ」


「え?今なんて言ったの?」アノメが聞き直す。


 「異世界でもどこでも行ってやるって言ってんだよ…!」


 良く言えば勇敢、悪く言えば無謀。考えなしに行動してしまう悪癖あくへきをすぐさま後悔することになる。


 「よく言ったわ!」


 アノメの言葉と共にタクミの身体の周りが眩い光によって包まれる。


 えっ、もしかしてもう飛ばされるの?心の準備とか全くしてないけど?展開早くない?


 「それじゃあ、幸運を祈るわ!」


 すでにアノメは満面の笑みで手を振って俺を見送る構えだ。


 「ちょ、ちょっと待っ—」

 

 そして残響だけを残してタクミはこの空間から消えた。


 「ふう〜、やっと誰も欲しがらない売れ残りスキルを押し付けることができた…」


 「さようならタクミ、貴方の新たなる旅立ちに幸運を祈るわ」


 次の世界へと旅立った人間に祈りを捧げた後、アノメもその場所から消え去った。



 第一話 完



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