第2話 冒険
ザァー。ザァー。心地いい波の音。真っ青な空。気持ちいいな。ん!?なにこれ??私空とんでる????とまどってジタバタしたら、ばさばさっという音が聞こえた。まじか。私は生まれ変わってしまったんだ。どうやら燕になったらしい。なんか久々の自由だな。あれっ空ってこんなに青いんだっけ。ふとそんなことを思った。
「はじめまして。そろそろ海を渡る季節がやってきますねえ」
急に燕語で話しかけられてとまどった。でもきちんと意味は理解できるもんなんだって驚いてしまった。そっか。渡り鳥だからか。たしかにちょっと肌寒いかも?
「あのお、一緒に旅しませんか?一人だと心もとないので。」
緊張気味に話してみる。
「えぇ。一緒に行きましょ。私のことはあーさんって読んでくださいね。あなたはなんてお名前?」
「うーんと、じゃあ、みほで。」
「わかったわ。よろしくね、みほさん。」
そして、海を渡る日がやってきた。たくさんの自然に囲まれて雨の日も風の日も粘り強く進み続けた。大自然には長い間触れてこなかったので、そのスケールの大きさに驚いたし凄いなと思った。人間だった頃の自分は自然とは関係のないところで生きていたので、心が洗われていく気がした。いかに自分が小さな世界で生きてしまったかを思い知らされた感じがしたのだ。だいぶ目的地が見えてきて休憩を挟んでいるときに思い切ってカミングアウトをしてみた。
「あーさん、実は私、人間の生まれ変わりなんですよ。」
「え・・?」
「きっとこの旅は私が失ったなにかを取り戻すための旅なんです。」
「ちょっと詳しく聞かせてもらってもいいかしら」
そこから私は人間だった頃の記憶をすべて話した。そしたらあーさんは、戸惑いつつも想像を巡らせて私が話す世界線を一生懸命に理解してくれた。
「それは、大変な思いをされてきたんですね。」
「いや、きっと・・・この旅は私が失ったなにかを探すためのものなんじゃないかなと感じているんです。」
「そうね、ここで一つ質問をしていいかしら?」
「はい。」
「あなたはどんなあなたになりたいの?」
私は黙り込んでしまった。そうか。私は自分のなりたい自分になっていたわけではなくて、気づいたらまわりの目を気にして自分を見失っていたのか。
「それが見つかればこの旅はあなたにとって大きな財産になるわ。」
休憩とり終えて再出発した。
やっとのことで島が見えてきた。綺麗だな、心からそう思った。みわたしてみるとたくさんの人間がいた。
「あーさん、少し人間観察をさせてもらってもいいですか。」
「ええ、なにか見つかるものがあるなら。」
思い立った私はまず公園に出向いた。そこにはランニングをする人、一緒に遊ぶ親子、絵を描く人、ダンスをする人、楽器を奏でる人、沢山の人がいた。そしてその一人一人が楽しそうで笑顔がキラキラしていた。
あ、そうか。自分が心からやりたいことを思いっきりやってる人は輝くんだな。そう気付いた。私はすぐに報告に行った。
「あーさん、私は自分がやりたいと思ったことを楽しんで思いっきり突き進んでいく人になりたいです。」
「みつかったか。よかったね。」
ホワホワホワァァァ。なんだろうこの感覚。
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