8.アキツシマ連合王国・竜骨研究所。
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〈
緑の豊かな、そのエリアの西の外れに、高い鉄柵で、かこまれた、大きな森がある。柵の上の有刺鉄線には、電流が流れていて、警備の厳重さが、一目見ただけでわかる。
アキツシマ連合王国・
外から、研究所へ、つながるのは、ほそい一本道だけだ。出入り口も、表門の一か所だけ。鉄門のわきには、常に守衛が、ふたり立っていて、よその人間が、なかへ入るには、一日使いきりの、紹介QRコードを見せなくてはならない。当然、エリアのなかでも、入っていいのは、ごく一部だけになる。
エリア内には、一本の川から水が引きこまれている。蛇のうねうねとしたようすに似た、とても長い川だ。その川は、
建物の中央に作られた滝と池は、天井から床までが、強化アクリルガラスに、覆われている。見た目は、まるで水族館の大型水槽、そのものだ。
池の底にしずんでいる〈
その回路は、とある〈
その、〈
〈
彼らの脳は、
「嘘」、というのは、とても難しい。一般的に、それは良いこととは思われないものだが、決して、悪いことのためだけに使われるものでもない。
だが、生まれついて「嘘」の使えない〈
しかし、近年では科学が進み、その強すぎる感覚をおさえるための装置も開発され、少しずつ交流が増えてきた。そうして、街におりてきた〈
「――今日も、
そうつぶやいたのは、どっしりと太った、白衣の男性だった。彼は、新技術の組みこまれた、アクリルガラスのすぐそばで、エアーディスプレイに表示された数値を、ていねいにチェックしている。眉間には、しわがより、顔の筋肉は、きびしく強ばっている。二重あごは、みっしりとしていて、白いワイシャツのえりのなかに、埋もれていた。
「はい。エラーは見られませんね」
キュウイン博士のとなりで、エアータッチパネルにチェックを入れているのは、同じく白衣をきた博士だ。つるのほそいメガネをかけていて、髪は短い茶髪にしてある。ちらりとレンズを光らせてから、メガネの博士は、〈
キュウイン博士は、ひとつ、ため息をつくと、再びディスプレイに目をむけた。すると、「そういえば、今日からでしたよね」と、なにげないふうに、メガネの博士がつぶやいた。
「ウタマクラお嬢さんが、こちらへアルバイトに入られるのは」
「――はい」
キュウイン博士の表情が、わずかばかりに、硬くなる。
「ここのアルバイトにも入れるなんて、もう、そんなに大きくなられましたか」
メガネの博士の言葉に、キュウイン博士は、それ以上なにも返すことが、できなかった。
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