第6話 幽霊なんて嘘と言いきった友人が見た話。


「心霊現象なんてナイナイ。そんな非科学的なものあるわけ無いだろ?」

 そう言いきっていたのにソイツが、

「───全否定は科学的に駄目だよな、うん。とりあえず完全否定のために証拠を積み上げていかないとな」

 程度には考え方が変わった話。ちなみにコロナ騒ぎが起きる少し前の話


 馬車馬のように働かされ、39度の熱発の最中でも倉庫の中で自身の業務と関係の無い事をさせられていた時。

 午後7時頃、友人から1本の電話が掛かってきた。

『昨日お前〇〇大学前通った?』

「通ったよ。仕事の絡みで呼び出し受けて」

『なんか女の子後部座席に乗せてただろ。お前社用車使っていないから良いけど、知ってる人が見たらなんだと思うぞ?』

 まあ確かに、私が職務中に見知らぬ女の子を送迎しているなんて見られたら色々言われるのは間違いない。

 でもね───

「待て待て。私の車知ってるでしょ。後部座席は荷物満載よ?パソコンパーツと道具類、本の類が雑多に置かれているのに無理だよ」

 当時私の車はSUVタイプの軽自動車だったが、人を乗せることを嫌い後部座席には仕事の荷物や緊急時のPC機器類やパーツが。助手席には私のカバン等を常に置いており、人を絶対乗せないという鋼の意思を体現した状態だった。

 しかし友人はなおも食い下がる。

『は?いや後ろの子が話しかけていただろ』

「いやだからいないって」

『………見間違いか』

 友人はかなり納得がいかないようだったがそう言ってそれ以上の追求を止めた。

 それから2ヶ月後、夕方6時40分。

 その日は友人が会社の側に来たので会わないかと電話が掛かってきたので仕事を無理矢理切り上げて会社を出、友人の待つ少し離れた駐車場へと向かった。

「おーす……」

 日が沈む時間帯。

 友人が手を挙げた状態で固まった。

「どした?今日休みだったのか?」

 私がそう聞きながら近付くが、友人が動かない。

「…お前、その子、誰?」

「んー?顔見える?」

「………いや、えっ?」

 困惑する友人。

「で、今日休みだったん?」

「あっ、ああ…待てだからs」

 友人が指を指す。

 そこに子どもなんていない。

 当然元々いない。

 だって私、会社帰りだよ?

 しかも結婚含めそう言った関係者なし。

 勿論子どももいない。

 それは友人だって知っている。

「幻覚幻覚。お前お得意の否定しておけば?」

「……いや、それは」

「この周辺はそういった記憶が多いから気にしすぎたら引っ張られるぞ」

「…ああ」

 友人は素直に頷いて駐車場へと向かった。

 その後少し離れた所にある某牛丼チェーン店に入る。

「お前、あれ、なんだよ」

「お前が信じないものの可能性」

 お昼も食べ損ねていたので自分の分牛丼並2つ注文して一息吐く。

「あの時なんで顔が見えるか聞いた?」

「見えたら憑かれる可能性が高いから」

「えっ?」

「実際そっちに言われたとき、私にその男の子と女の子達は見えなかった」

「待て待って。2人?」

「2人。憑いてくるのは。ただ、車をああしているから余り車に乗りたがらないみたいだけど」

 それが車に人を乗せたくない理由。

 顔が見えたら憑かれる可能性が高い。あと、2人とも見えたら確実に憑かれる。

 そして病院に行くことになる。

 多分あの会社もしくはその周辺の土地に関する子達だと思うけど、一緒にいると大概危険なことになるので私は知らないフリをする。

 ちなみにその子達が車に乗り込むと事故が起きる。

 4ヶ月以内に営業の人達が営業車3台(本当は4台)事故を起こした際、会社のお偉いさんが一度お坊さん呼んで建物内を行脚しながらお祓いしていたけど、霊は誰一人として出て行ってなかった。

 1階に一人、2階に一人、3階踊り場に一人、職員休憩室に子ども2人。

 このうち3名が自由に動き回るんだけど、本当に誰も払われていなかった。

 マジであのお坊さんあれでいくらもらったんだろうか…


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