【短編集】死ぬのがいいわ

白雪れもん

死ぬのがいいわ

【死ぬのがいいわ】


桜井由依は、クラスの隅でひっそりと過ごすことが多かった。窓際の席で、一人静かにノートに落書きしている彼女の目は、どこか遠くを見つめているようだった。彼女は日々の生活が耐えられず、心の中で「死ぬのがいいわ」と呟くことが増えていた。

一方、藤原美咲はクラスの人気者で、誰にでも優しく接していた。彼女の明るい笑顔は、周囲の人々を惹きつけてやまなかった。しかし、美咲の心の奥底には誰にも言えない孤独がひっそりと息を潜めていた。彼女は自分の感情を隠し、誰にも本当の自分を見せることがなかった。

ある日、美咲が由依の机の隣に座るようになった。彼女の突然の行動に、由依は驚きと戸惑いを隠せなかった。それでも、美咲の笑顔に少しずつ心を開き始める。

「どうしたの?最近元気がないみたいだけど」と、美咲が心配そうに尋ねる。由依はその問いに答えたくなかったが、美咲の真剣な目を見て、ついに口を開いた。「正直、私は毎日がつらくて。死んでしまいたいとさえ思うんです。」

美咲はその言葉に衝撃を受けたが、同時に心の中で何かが動いた。彼女もまた、自分の痛みを由依に打ち明けたいと考えた。しかし、どう言葉にすればよいかわからず、黙ってしまった。

日々が過ぎる中、二人は次第に親しくなっていった。美咲は由依に何度も声をかけ、彼女を励まそうとした。由依も、美咲がその存在だけで心が少し軽くなることを感じていた。

ある夜、由依と美咲は学校の屋上で二人きりになった。星空を見上げながら、美咲はついに自分の心の奥底にある秘密を打ち明けた。「実は、私も同じような気持ちを抱えているの。誰にも言えず、ずっと一人で抱えていたんだ。」

由依はその言葉に驚いたが、同時に深い共感を覚えた。「あなたも?どうしてそんな気持ちが…」

「私も、何もかもが辛くて。あなたと同じように、死ぬことさえ考えてしまう。だけど、あなたがいることで、少しだけ希望が見える気がするの。」

二人は、その夜を通じてお互いの痛みを共有し合った。由依は、美咲の存在が自分にとってどれほど大きな意味を持つかを再認識した。美咲も、由依の真剣な眼差しが心の支えとなることを感じていた。

しかし、時間が経つにつれ、二人の間には新たな葛藤が生まれた。由依は美咲の抱える深い孤独と向き合うことになり、美咲も由依の苦しみに対してどうすればよいのかを悩むようになった。互いに支え合う中で、時には感情的な衝突も起こり、二人の関係は複雑化していった。

ある日、美咲は由依に向かって決意を固めた。「私たち、これからどうなるかわからない。でも、一緒に生きていこう。どんなに辛くても、お互いに支え合っていこう。」

由依はその言葉を受け止め、美咲と共に未来を見据える決意をした。「ありがとう、美咲。あなたがいてくれることで、少しだけ希望が見える気がする。」

物語の終わりに、由依と美咲はまだ解決を見つけたわけではなかったが、互いの存在が彼女たちにとって大きな意味を持っていることを理解した。彼女たちの愛は、美しくも儚いものであり、お互いを支えながらも、時にはその深い痛みに共鳴していた。彼女たちはそれぞれの問題と向き合いながら、少しずつ前に進む道を見つけていくのだった。


【tempest】


松井修司は、高校の教室の隅で黙々とノートに落書きをしていた。学校での彼は目立たず、ただ周りと同じように過ごしていた。だが、心の中では嵐のような不安が渦巻いていた。未来の不確実性や、社会に対する無力感が彼を常に押し潰していた。

一方、佐藤由美はクラスの人気者で、誰とでも友達になることができた。しかし、彼女もまた内心では大きなプレッシャーと不安を抱えていた。大学受験や将来の夢、親からの期待が彼女を圧倒していた。彼女はその感情を隠しながら、明るく振る舞うことを決して諦めなかった。

ある日、放課後の図書室で、由美は修司と目が合った。修司が本を読んでいるその姿が、何故か由美の心に響いた。彼女は一度その場を離れたが、気になって再び戻り、修司に声をかけた。「こんにちは、いつも一人で本を読んでるね。」

修司は少し驚いたように顔を上げ、「うん、静かな場所が好きで。」と返事をした。由美はその答えを聞きながら、彼の静かな存在に安心感を覚えた。

その後、由美と修司は放課後に図書室で会うことが常になり、少しずつお互いの心の内に触れ始めた。由美は修司の内向的な部分に惹かれ、修司は由美の明るさの裏に隠された不安を見透かしていた。彼らは、互いに触れられることの少ない本当の感情に共鳴するようになった。

ある雨の日、由美が修司に「私たち、未来に対する不安をどうやって乗り越えればいいのかな」と尋ねた。修司はしばらく黙って考えた後、答えた。「未来は確かに不確実だけど、その不安を分かち合える誰かがいることが、少しは楽になるかもしれないよ。」

由美はその言葉に胸を打たれた。彼女もまた、自分の不安を誰かに打ち明けることで、少しでも楽になりたいと願っていた。彼女は修司に、自分の抱える将来へのプレッシャーや家庭の期待について話すようになり、修司もまた、自分の社会に対する無力感や孤独感を打ち明けた。

彼らの関係は次第に深まっていったが、現実の厳しさは彼らを試すように続いた。修司は進学先の選択で悩み、由美は受験のストレスに押し潰されそうになっていた。二人は互いに支え合いながらも、時にはその支えが足りないように感じることもあった。

物語の終盤、修司と由美は高校の卒業を迎え、それぞれの未来に向かって歩み始めた。彼らはお互いに感謝の気持ちを伝え合いながらも、それぞれの道を歩むことを決めた。別れの時が訪れ、由美は修司に「ありがとう、あなたと過ごした時間が私の心の支えになった」と言った。修司は静かに頷きながら、「僕も同じだよ。君と出会えたことが、少しだけ未来を明るくしてくれた」と答えた。

二人はそれぞれの道を歩みながら、心の中でお互いの存在を大切にし続けることを誓った。未来の嵐は続くだろうが、彼らはそれぞれの場所で少しでも前に進もうと努力し続けた。彼らの心には、共に過ごした日々が静かな光を灯し続けていた。


【SOS】


高橋悠人は学校では誰もが知っている存在だった。友達に囲まれ、明るい笑顔を絶やさずに過ごしていた。しかし、その笑顔の裏には、深い孤独と抑うつ感が隠れていた。家では、誰も気づかないうちに、一人で涙を流しながら未来への絶望に押し潰されていた。

一方、石田美里は学校では目立たない存在で、静かに過ごしていた。彼女の心は、自分自身に対する強い不安と、自己評価の低さで満ちていた。夜になると、彼女は自分の部屋でひとり涙を流し、何もかもが無意味に感じることが多かった。

ある日、偶然にも二人は放課後の図書室で出会った。悠人が気晴らしに来ていたのに対し、美里は静かな場所で一人になりたかっただけだった。最初はお互いに無関心で、静かな時間を過ごしていたが、あるとき、美里がうっかり自分の感情を漏らしてしまった。

「どうしても、私の存在が無意味に思えるんです。誰にもわかってもらえなくて。」美里が呟いたその言葉に、悠人はふと立ち止まった。彼もまた、同じような感情を抱えていたからだ。

悠人はその後、美里に声をかけた。「君も…そんな風に感じることがあるんだね。僕も似たような気持ちを抱えているんだ。」

美里は驚きながらも、悠人の言葉に少しだけ安堵した。「あなたがそう感じるなんて…信じられない。でも、少しだけ理解できる気がする。」

二人は、その後、図書室でお互いの心の内を打ち明けるようになった。悠人は自分の表面上の明るさと、内面的な孤独との矛盾について話し、美里は自分の自己評価の低さと孤立感について語った。彼らは互いの痛みに共感し、少しずつ心を開いていった。

しかし、日々が過ぎる中で、二人の心の深い部分にある痛みは簡単には消えなかった。美里は自分の孤独感に苛まれ、悠人は外面的には明るさを保とうとするも、内面的な絶望感に悩まされ続けた。二人の間に時折、不安と不信が芽生え、お互いの痛みを完全に理解することができないこともあった。

ある晩、美里は再び深い絶望感に襲われ、自分の部屋で一人で過ごしていた。その時、悠人からのメッセージが届いた。「今、君と話すことができたらいいなと思ってる。君がどうしても辛いときには、僕にSOSを送ってほしい。」

美里はそのメッセージを見て涙が溢れた。彼の言葉が、自分にとってどれほど大きな意味を持つかを感じた。彼女は一歩踏み出し、悠人に連絡を取り、その夜二人は長い電話を通じてお互いの心の重荷を分かち合った。

物語の終わりに、悠人と美里は依然として心の奥深くに苦しみを抱えながらも、お互いに支え合うことで少しだけ前に進むことができた。彼らの間には、完全な解決はなかったが、心の中に温かい灯火をともすことで、未来への希望を少しだけ見つけた。

彼らの心には、深い絶望と孤独が共存する中で、互いの存在が少しずつ救いとなり始めた。SOSのメッセージは、ただの言葉ではなく、彼らの心を結びつける大切な信号となったのだった。


【媒染】


佐々木光太郎は、大学での優れた成績と明るい性格で周囲から一目置かれていた。しかし、その裏には深い孤独と薬物依存という影が潜んでいた。彼は数ヶ月前から、学業や生活のストレスから解放されるために、違法な薬物を使い始めた。最初は効果的だったが、次第にその依存度は増していき、彼の心と体を蝕んでいった。

ある日、光太郎の幼馴染である藤原奈緒が、彼の様子に違和感を覚えた。彼女は光太郎が以前のように元気でなく、どこか投げやりな態度を見せることに気づいた。奈緒は心配になり、彼に対して直接的にそのことを尋ねる決心をした。

「光太郎、最近どうしたの?なんだか元気がないし、何か隠しているんじゃないかって心配しているの。」奈緒はその言葉を言うとき、震える声を抑えながら、光太郎の目をじっと見つめた。

光太郎はしばらく黙っていたが、やがて苦しそうにため息をついた。「奈緒、実は…僕、薬物に頼っているんだ。ストレスや不安を感じると、どうしても使ってしまうんだ。」

奈緒はその言葉にショックを受けた。光太郎の苦しみを理解しながらも、自分がどう対処すればいいのかがわからなかった。彼女は光太郎を助けたい一心で、どうにかして彼を支えようと決意した。

光太郎は薬物から抜け出したいと願いながらも、その強い依存に苦しんでいた。彼は時折薬物を手放そうとするものの、ストレスや不安に直面するたびに再び手を出してしまう自分を責めていた。

奈緒は光太郎の支えとなるために、彼と一緒にカウンセリングに通い始め、彼が依存から抜け出すための方法を模索した。彼女は彼の痛みを共有し、支え合うことで、光太郎に少しでも希望を与えようと努力した。

しかし、薬物の依存は簡単には解決できなかった。光太郎は時折自分の弱さと向き合いながら、奈緒の支えを受け入れ、少しずつ回復への道を歩んでいった。奈緒はその過程で辛い思いをしながらも、光太郎に対する愛と信頼を失わなかった。

物語の終わりには、光太郎は依存から完全に抜け出すことはできなかったものの、奈緒の支えによって少しずつ自分を取り戻し始めた。彼は自分の弱さを受け入れながらも、未来への希望を持ち続けることができるようになっていた。奈緒もまた、光太郎の苦しみを共に乗り越えたことで、自分自身の強さと優しさを再認識した。

二人の関係は依然として複雑で、時には苦しみが再び襲うこともあったが、お互いの存在が大きな支えとなっていた。彼らはそれぞれの人生の中で、少しずつ前進することを決意し、苦しみの中にあっても希望を見つけ続けた。


【pianissimo】


村田明は、音楽大学での生活に疲れ果てていた。幼少期からピアノに親しんできた彼にとって、音楽は生きる意味そのものだった。しかし、大学に入学し、厳しい練習と高い競争に直面する中で、彼の自信は徐々に失われていった。努力してもなかなか成果が出ず、周囲の優れた才能に圧倒されるばかりだった。

ある晩、村田はアパートの小さなピアノの前に座り、無気力に鍵盤を叩いていた。その音色は、彼の心の中の虚無感を映し出すように響いていた。彼はピアノの前でただ途方に暮れるだけで、自分の未来が見えなくなっていた。

そんなある日、彼の大学時代の友人である田中美咲が訪ねてきた。美咲は明るい笑顔を浮かべながら、村田の部屋に入ってきた。しかし、すぐに彼女は村田の沈んだ様子に気づき、心配になった。

「明、どうしたの?最近、あなたがピアノに対して全くやる気がないように見えるけど…」美咲は慎重に言葉を選びながら問いかけた。

村田はため息をつき、「僕はもうダメだと思う。努力しても結果が出ないし、他の人たちと比べると、自分がどれだけ無力かがよくわかる。」と苦しそうに語った。

美咲は村田の言葉を聞きながら、彼の痛みを感じ取った。彼女は昔から村田の才能と努力を知っていたが、今の彼の姿を見ると、自分がどう助ければいいのかわからなかった。彼女は自分の言葉で村田を支えようと決意した。

「明、あなたがこれまでにどれだけ頑張ってきたか、私は知っているよ。でも、結果だけが全てじゃないと思う。あなたが音楽を愛していること、自分の力を信じることが大切なんじゃないかな。」

村田は美咲の言葉に少しだけ心が温かくなったが、それでも彼の心の深い部分にある絶望感は簡単には消えなかった。彼は音楽の道を断念し、別の道を歩もうとしていたが、その決断が自分の人生の失敗であると感じていた。

美咲は村田がピアノに対する情熱を取り戻すために、彼と一緒に音楽を楽しむことを提案した。彼女は村田の家でのピアノの練習に付き合い、一緒に音楽を聴いたり、演奏を楽しんだりすることで、彼の心に少しずつ変化をもたらそうとした。

村田は最初は不安と抵抗感を持っていたが、美咲と過ごすうちに、少しずつ音楽への愛が再燃していった。彼は音楽に対する思いを再確認し、自分がどれだけ音楽を愛しているかを再認識した。しかし、同時に彼は音楽の道を完全に再開することができるのかという不安を抱えていた。

物語の終わりには、村田は音楽の道を歩むことを決意し、別の形で音楽に関わることを選んだ。彼は演奏家としてではなく、音楽教育者として新たな道を模索し始めた。美咲は彼の新たな挑戦を応援し、彼の心の支えとなり続けた。

村田の心には、音楽への情熱と共に、美咲との絆が深く刻まれていた。彼は自分の道を見つけながらも、音楽の美しさとその影響力を改めて感じ、未来に対する希望を持ち続けることができた。


【脊椎と激震】


佐藤智明は、都市の喧騒の中で一人静かに過ごす生活を送っていた。30歳になったばかりの彼は、会社での責任と過重労働に押し潰されるように感じていた。毎日長時間働き、休息を取る暇もなく、心身ともに疲れ切っていた。彼の生活は次第に、仕事と不安に押しつぶされる日々へと変わっていった。

ある日、智明は突然、背中に激しい痛みを感じるようになった。それはただの筋肉痛ではなく、まるで体の奥深くから痛みが押し寄せてくるような感覚だった。彼はその痛みを放置し、仕事を続けることを選んだが、痛みは次第に強くなり、彼の日常生活に支障をきたすようになった。

智明の状態を心配したのは、彼の長年の友人である松井由美だった。由美は医療従事者として働いており、智明の背中の痛みが単なる肉体的なものではなく、彼の精神的なストレスから来ている可能性があると感じていた。彼女は智明に対して何度も助けを求めるように言ったが、彼は「大したことない」と言って聞こうとしなかった。

ある晩、智明は自宅のベッドで眠れないまま、背中の激痛に耐えていた。痛みが襲うたびに、彼の心には次第に孤独感と絶望感が広がっていった。彼は自分の心と体が限界に達していることを感じながらも、それをどうにかする方法がわからず、ただひたすら痛みに耐えるしかなかった。

その時、由美が突然訪ねてきた。彼女は智明の痛みに気づき、彼の状態を真剣に心配していた。「智明、これはただの痛みではないと思う。精神的なストレスが原因で、身体にも影響が出ているんじゃないかしら。医者に見てもらうべきよ。」

智明は最初は抵抗したが、由美の強い勧めに心を動かされ、ついに医師の診察を受ける決意をした。診察の結果、医師は智明の痛みが過剰なストレスと疲労によって引き起こされている可能性が高いと説明した。智明は自分の状態がこんなにも深刻だったことにショックを受けたが、同時に少しだけ安心感も感じた。

治療を受ける中で、智明は自分自身と向き合う時間を持つようになった。彼は過剰な労働と自己犠牲によって、自分の心と体をどれほど傷めていたかを理解し始めた。由美は彼の回復を支えるために、必要なサポートを提供し、彼の心に寄り添い続けた。

物語の終わりには、智明は自分の生活を見直し、仕事とプライベートのバランスを取り戻す努力を始めた。彼は自分の限界を認識し、無理をせずに休息を取ることの重要性を学んだ。由美の支えによって、彼は少しずつ心と体の回復を遂げ、新たな生活を始める勇気を持つことができた。

智明の背中の痛みは完全に消えることはなかったが、彼は痛みを通じて自分自身と向き合い、より良い未来を築くための一歩を踏み出した。由美との友情も深まり、彼は再び希望を持ち、未来に対する新たな期待を抱くようになった。


あとがき


今回は鬱小説を書いて見たいという軽はずみな内容で書いたんですが予想以上に心が苦しくなってしまい少な目で終わらせていただきます

シリーズ系で続けてほしいものがあったらコメントよろしくお願いします。

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