3
林田は、何も言わなかった。
頭を下げたままだったから、どんな顔をしているのかも分からなかった。
「なあんだ」
林田の、あっけらかんとした声が聞こえた。顔をあげると、林田は壁に背中から寄りかかり、頭の後ろで両手を組んでいた。
「なんか偉そうなこと言ってたけど、結局おまえも俺と似たようなもんじゃんか」
「似てる?」
そうだよ、と林田は虚しそうに笑った。
「俺を卑怯者だとか言ったくせに、そういうおまえはどうだよ。レギュラーを勝ち取っておきながら、その責任に負けちゃうなんてさ」
小者じゃんかと林田は言った。
「小者――か」
言い返すことはできなかった。
俺は、小者だ。
でもいいよ、と林田は続けた。
「小者でもなんでもいいよ。そのせいで俺がエンザイになりかけたのもどうでもいいよ。だって――」
友達だからなと林田は言った。
「おまえは小者、俺は卑怯者。友達としては釣り合いが取れてるんじゃねえか?」
そして壁から背中を離し、俺の横に並んだ。
「な」
と俺の肩を乱暴に抱き寄せる。
その勢いで松葉杖を取り落としそうになる。それをなんとか持ち直し、
「危ないだろ」
なんとか姿勢を保った。
「終わりましたね」
と築垣が言った。
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