#3




「水有りコースと水無しコースのふたつのコースがございますがどちらをご所望でしょうか?」



「水有りですと約3週間ほど時間をかけてジワジワと飢える苦しみをお楽しみ頂けます」



「水無しですと約1週間ほどで死の危機に瀕することが出来るでしょう」



「そうですねぇ」



「個人的には水有りコースがオススメですね」



「やはり、ゆっくり時間をかけて苦しむご主人様を堪能したいです」



「徐々に衰弱していくご主人様……。ああ、私の腕に抱かれてご主人様の生命の灯火が消えていく……。失いたくなんか無いのに抗いようのない現実に私の胸が締め付けられる……」



「ゾクゾクしちゃいますね」



「あ、はい」



「水無しコースですね。分かりました」



「ええ、ご主人様の意見は尊重しますよ。なにせ私はご主人様に使えるメイドですからね」



「それはダメです。拘束は解きません」



「絶対に逃がしませんよ」






1日目。






「ーーーーはい。ーーの妻です。はい。いつも主人がお世話になっております。実はですね。主人が体調を崩してしまいまして……。はい。そうですね。多分、新型コロナか、何かだと……。ですから1週間ほどお休みしますので。はい。よろしくお願いします」



「通話終了。これでヨシ」



「ふふふっ」



「公認の妻になってしまいました。この調子で外堀も埋めていくことにしましょうか」



「あっ、ご主人様。連絡の方はしておきましたので、なんの問題ありませんよ。これで心置き無く1週間ほど飲まず食わずの監禁生活が送れますね♡」



「そろそろ私もお腹が空いてきましたね。食事にしましょうか」



「よいしょ。よいしょ」




ガシャガシャ。




「準備が出来ました」



「まず、こちらが肉焼き用のグリルプレートですね」



「そして、こちらがバチクソ高そうで実際にクソ高くて美味しいステーキ用のお肉になります。いやー、このお肉高かったですよー。見てください、この油の付き方。見た目だけで高級なお肉なの分かっちゃますねー」



「さて焼いていきましょうか」




ジュウッ!




「んふっ。良いですね。どうしてこう肉の焼ける音とというのは心震わせるモノがあるのでしょうか?テンションが上がります。これに塩コショウを少々振りかけますね」




ガシャガシャガシャ!




「ふふふっ。随分と活きのいいご主人様ですね」



「暴れちゃダメですよご主人様。暴れても手錠は外れませんよ?抵抗は無駄です。そこで大人しく高級な肉が焼ける様を眺めていることですね」




ジュウジュウッ。




「ああ……。肉の焼ける香ばしい匂いがしてきましたね。食欲をそそる良い匂いです。もうこれだけで白米3杯ぐらいペロリと平らげられてしまいそうです」



「そろそろひっくり返しましょうか」




ジュッ……ジュウッ!




「綺麗にひっくり返せませたね。ほら見てください。この綺麗な焼き色。もう美味しそうです。このまま食べられそうです」



「ちなみに焼き加減はどの程度がお好みでしょうか?」



「ふむ。半生のミディアムですか。普通ですね」



「私は断然レアがいいですね。やっぱりナマが最高です。ナマの方がお汁をいっぱい感じられるでしょう?私は中に直接ぶちまけられて感じたいのです。きっととっても気持ちいいんでしょうね。お腹の中がパンパンになるまで大量に注がれて……。んッ……。もう想像しただけで……」



「んー?」



「ふふっ」



「肉汁の話ですよ?」



「他意はありませんよ?」



「ふふふっ」



「さて、そろそろ焼き上がりましたかね」



「ご主人様ご希望のミディアムレアです」



「カットしますね」



「あらっ。綺麗な断面図。綺麗な焼き色に、中は半ナマで赤く。完全に「コレ絶対に美味しいヤツ!」な見た目です。ほらほら。凄いプルプルしてて、ちょっと押すだけで肉汁が溢れだしてきますよ」



「これにちょっとワサビを乗せて、お醤油を垂らして……わさび醤油で頂いちゃいましょう!」



「あーん」




パクっ。




「んんんッ……!美味しいぃいいッ……!」



「もう口の中で一瞬で溶けちゃいますッ」



「ああ、これは溜まりませんねぇ……」




プシュッ!




「キンキンに冷えた生ビールですぅ!」



「これで口の中の油を流し込んじゃいますぅ!」




ングッ、ングッ、ングッ、ング……。




「ぷはぁあッ……!!!」



「はぁあ……。効きますねぇ……!やっぱり生は最高ですッ!」



「すかさず今度はカットステーキにおろしポン酢ッ!」




パクっ!




「んふッ……!サッパリしてて美味しい!」



「からのぉー……生ッ!」




ングッ、ングッ……!




「ふぅうぅーーっっっ!」



「生きてて良かったッて実感が湧きますねぇ。はぁ、幸せ」



「次は無難にステーキソースにしましょうかね」



「おや?おやおや?」



「どうかなさいました?ご主人様?」



「そんな飢えた獣のように目を血走らせて。ガンギマリじゃないですか。そんな目で見ても”まだ”食べさせてあげませんよ」



「はぁあああぁぁぁぁ…………」



「今はこのメイドちゃんのアルコール臭い吐息で我慢してくださいね♡」









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