第120話 変わらぬ想いとオーバーキル⑨

 何の躊躇ためらいもなく、真っすぐと向けられる眼差し。

 いつだって彼は、私を最優先に考えてくれる。


「まっ、知っての通り、俺は執念深いからな。簡単には諦めねーし、望んだものは必ず手に入れる」

「っっっ」

「惚れ直すだろ」


 余裕と言わんばかりの色気のある顔。

 昔から、何一つ変わってない。

 匠刀が言うと、本当に何でも叶うんじゃないかと思えてくるよ。


 だって、あなたと一緒にいてできないことなんて、何一つなかったのだから。


***


「キャアァ~~ッ、ちっちゃくて可愛いっっっ!!」


 産婦人科に到着したら、既に赤ちゃんは産まれていた。


 3015gの女の子。

 新生児室に並べられたベッドに『津田 雫』と書かれたネームバンドを足首につけてる赤ちゃんを発見。

 虎太くんは雫さんのそばにいるらしくて、新生児室の前に両家のご両親がいる。


「おめでとうございます」

「ありがとう、モモちゃん」

「モモちゃん、来てくれてありがとうね」

「雫さんのご出産おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 匠刀のご両親にお祝いの言葉を、雫さんのご両親にもお祝いの言葉を伝えた。

 両家初孫というだけあって、皆幸せそうに赤ちゃんを見ている。


 もとちゃんの赤ちゃん(男の子)も可愛かったけど、女の子はまた違った良さがあるというか。

 本当に生まれた時から、顔の雰囲気が女の子らしくて可愛すぎる。


「匠刀、おじさんになったね」

「オジサンじゃなくて、叔父さんな」

「フフッ」

「っんだよ」


 照れてるのが分かる。

 やっぱり赤ちゃんって不思議な力を持ってるよね。

 いつもは涼しい顔で余裕そうな匠刀が、今はちょっと可愛らしく見えるよ。


「桃子」

「……ん?」

「俺らも子づくりすんぞ」

「ッ?!!……ちょっ、何こんなとこでいきなりっ」


 すぐ傍にいる、匠刀のご両親と雫さんのご両親が驚いて振り返ったじゃない!!


「プロポーズしてんだけど」

「……はぁぁあっ?!」

「匠刀、今のはさすがにねーぞ」

「虎太くんっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る