第108話 恋人の証と一軍男子⑬

「じゃあ、私らは2次会に行くけど、モモのこと、宜しくお願いします」


 私と匠刀を除いたメンバーで2次会(カラオケ)に行くことになった。

 元々、1杯だけのつもりだったし。

 合コンを楽しもうだなんて微塵も思ってなかったけど。

 こんな風に、匠刀と二人きりになるだなんて思いもしなかった。


「少し歩けるか?」

「……ん」


 ロングコートにマフラーに手袋といった重装備なのに。

 居酒屋の隣りにあるコンビニでカイロを買ってくれた。

 こういうさりげない優しさは、あの頃と何一つ変わってない。


 12月中旬の21時過ぎだから、夜風が冷たいはずなのに。

 お酒が入っているせいなのかな。

 それとも、匠刀が隣りを歩いてるからなのかな。


 ちっとも寒さだなんて感じない。

 むしろ、顔が火照って熱いくらい。


 何の会話をしたらいいんだろう。

 どうやって話を切り出したらいいんだろう。

 6年の間に、何度も何度も再会できた時のことを思い描いていたのに。


 実際、彼を前にして気付く。

 私から、気安く話しかけること自体許されないのだということを。


「誕生日プレゼント、ありがとな」

「へ?……あぁ、……ん」


 6年前にこっそり隠しておいた写真。

 自分から離れたのに、未練がましく彼を縛り付けるような身勝手なプレゼントだったのに。

 彼はあれをどんな想いで見つけたのだろう。


「今さら、何かを言ったところで言い訳にしかならないから……」

「いいよ、何も言わなくて」

「……」

「俺の顔を忘れてなかった……それだけで十分だから」

「っっっ」

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