第107話 恋人の証と一軍男子⑫
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「えぇ~っ、じゃあ、6年も遠距離恋愛してるってこと?!」
「それ、修行僧じゃん」
「モモの好きな人って、遠距離の彼氏さんだったんだぁ」
「……」
「そりゃあ、こんだけ可愛い彼女がいたら、合コン誘っても来るわけないわな」
何の悪戯なのか。
もしかしたら。
奇跡があるなら。
運命があるならと思ってたけど。
本当にそれらが現実になるだなんて。
今、私の隣りに、匠刀がいる。
真央に拝み倒されて、6年ぶりに東京に戻って来た私の隣りに。
本当に奇跡としか言い表せないような状況。
これは運命といっていいのかな。
6年間1日たりとも忘れたことのない、最愛の人と再会を果たした。
自分から去るようにして匠刀を捨てたような私は、彼に合わせる顔がなくて。
友人たちの会話に相槌を打つことすらできずにいる。
昔から世渡り上手な匠刀だから、6年という歳月を微塵も感じさせないほどフランクで。
友人たちに上手く説明しながら、時折優しい微笑みを私に向けて来る。
その度に胸がズキンと痛む。
なじられて。
怒り散らして。
軽蔑されても当然なのに。
彼はあの日と変わらぬ態度で、私の隣りにいる。
しかも、テーブルの下で、ずっと私の手を握ったまま。
いつの間にか席移動もされてて。
隣りに座ってたはずの真央がテーブルの向かい側にいる。
『モモの好きな人って、遠距離の彼氏さんだったんだぁ』
真央が要らぬことを言うから、私の気持ちがバレちゃったじゃない。
「桃子、今日実家に泊まるの?」
「……ううん、みんなと一緒にホテルだけど」
「……そっか」
6年ぶりに帰省したと思ったよね。
だけど、それを打ち砕くみたいな返答でごめんね。
まさか、本当に会えるとは思ってもみなかったから。
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