第104話 恋人の証と一軍男子⑨

(匠刀視点)


「今着いた。部屋、どの辺?」

「通路を突き当りまで進んで、右に曲がったとこにあるお座敷」

「了解」


 サークルの打ち上げでよく使っている居酒屋に到着した匠刀。

 ギリギリまで、本当は来るつもりはなかったんだけど。

 初めて浮気心?みたいなものが芽生えてしまった。

 合コンに誘われても、今まで一度だってそそられたことなかったのに。

『聖泉のマドンナ』という亮介の言葉に完全に釣られた。


 その子は『冷譲』とも呼ばれていて、清純派若手女優みたいな美貌の持ち主なのに、誰が誘っても素っ気なく断ることで有名だという。

 そういった類の噂が耳に入っても、今まで全く興味がなかったのに。


 桃子の両親からも、自分の両親や兄からも教わったわけではない。

『全寮制の女子校』ということしか知らされてないけれど。

 その条件を満たす高校を俺はしらみつぶしで調べた。


 47都道府県の全高校を検索して、尚且つ、心臓に難を抱える一人娘を預けられるほど、安心して通える高校は、全国でたった3校しかなかった。

 その3校のうち、『聖泉女学院』という高校が、なんと桃子のかかりつけでもある白星会医科大学の付属とも言える提携校だったのだ。


 そして、俺を見かねた兄貴が、スパイのように。

 親父と桃子の両親が話をしているのを何度かこっそり盗み聞きしてくれた。


『内部進学したらしい』


 全国で条件を満たす全寮制の女子校は3校だったが、内部進学できる高校は『聖泉』しかなかった。

 だから、何らかの理由で中退や留年をしてない限り、桃子は今、聖泉女子大の4年生ということになる。

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