第79話 突きつけられる現実と初めての手紙⑥

 なんで繋がんねーんだよ。

 会えなくても声くらい聞かせろっつーの。

 桃子は毎日会わなくても、平気なんだろうけど。

 俺は気が狂いそうだってのに。


 クリスマスデートをしたあの夜の別れから、メールも電話も音信不通。

 桃子だけでなく、桃子の両親とも連絡がつかない。

 両親や兄貴のスマホから電話やメールを入れてみるものの、全く同じ状況。

 こんなこと、今まで一度だって無かったのに。


「もしもし?」

「桃子と連絡つかねーんだけど」

「それ、2時間前にも同じこと聞いた」


 いてもたってもいられなくて、親友の晃司に電話した。


「なぁ」

「……ん?」

「どうやったら桃子の声聞けんの?」

「知らねーよ」

「どこに行ったら会えんの?」

「んなこと、俺に聞くな」


 晃司に八つ当たりしてもどうにもならないのは分かってる。

 それでも、どうしようもなく不安で。

 もしかして心臓の具合が悪くなって、入院してるんじゃないかと思えてならない。


 心臓だから。

 電波機器が心臓に負担をかけるから。

 だから、電話もメールもできないんじゃないかと思えて。

『バイバイ、匠刀』と言った桃子の声が、いつになく弱々しく思えて。

 頑張って伸ばした髪を切る決断をしたのだって。

 長期入院することが分かってたから、事前に切ることにしたんじゃないかと。


 いつもなら、デートは余裕のあるプランにするのに。

 あの日は、目一杯、……ありえないくらいぎゅう詰めだった。


 何で気付かなかったんだろう。

 どうして気づけなかったんだろう。


 いつもはどんな小さなことだって見逃さない自信があったのに。

 今さら後悔したって遅いのかもしれないが、どうしても納得いかなくて。

 俺は遣る瀬無い思いに駆られた。


 桃子、たった一言でいいから、無事な声を聞かせろよ。

 

 匠刀はスマホを握りしめて、何度も何度も桃子の無事を祈り続けた。

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