第78話 突きつけられる現実と初めての手紙⑤
大晦日の夜、リビングに勢揃いしている津田家。
「何で繋がんねーのッ?!おかしいだろっ!もう6日も経ってんのに、桃子だけじゃなくて、おじさんのスマホも、おばさんのスマホも繋がんねーんだけどっ!」
「……匠刀」
「俺のスマホ、ぜってぇ壊れてる!」
「……」
「いや、……けど、兄貴や親父のスマホからだって繋がんないんだから、桃子のスマホが壊れてんのか?」
匠刀はクリスマスから連絡がつかなくなった桃子に、一日中電話とメールを入れている状態。
半狂乱というより、既に精神崩壊寸前といった状態で、携帯電話会社のショップに『故障してるか確認して下さい』と毎日のように通う有り様。
そんな匠刀の姿を、兄の虎太郎は心痛な面持ちで見守っていた。
*
恋人の雫を通して、ファミレスに呼び出されたあの夜。
桃子から転校の意向を聞かされていた虎太郎。
匠刀との関係を清算するような桃子の決断に、虎太郎は何度も考え直して欲しいと訴えた。
けれど、桃子の意思は変わらなかった。
「親父」
「……ん?」
「おばさんの実家って、どこにあんの?」
「……」
「昔からの付き合いだから、知ってんじゃねーの?」
「……さすがに知らないよ」
「嘘吐いてねーだろ―な」
「嘘吐く意味がないだろ」
「……」
「モモちゃんだって、たまには羽伸ばしてゆっくりしたいだろうし、もう少し大人になれ」
「っんだよ、それ」
桃子の両親から事前に転校の意向を聞かされていた匠刀の両親。
虎太郎からも相談のような形で話を聞いていた、というのもある。
前もって心の準備ができていたこともあり、匠刀が精神的に不安定になっていても、何とか取り乱さずにいれているが……。
匠刀が幼少期から一途に想い続けてることを知っている父親は、虎太郎同様、胸を痛めていた。
「母さん、スマホ貸して」
「さっきも貸したじゃない」
「いいから、貸してっ」
深いため息を吐きながら、仕方なく自身のスマホを匠刀に手渡す母親。
ほっこりとした気分で年越しをしたいところだが、とてもそんな雰囲気ではない。
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