第64話 クリスマスデートと1カット④
クリスマスでどこも混むだろうという考えに至った私たちは、ミュージアム内のカフェでランチを済ませた。
キャラクターの顔の形をしたカレーやお子様ランチ風のプレートは食べるのが気が引けてしまうほど可愛くて、手を付けるまでに何度もスマホで写真を撮った。
次に向かったのは、川崎市内にある、宙と緑の科学館へと。
クリスマス特集の雑誌に載っていたプラネタリウムを観るためだ。
13時30分からの投影を観覧するためにチケットを買う。
最終の投影が15時からということもあって、一日デートを楽しんで最後にプラネタリウムを観て帰るというプランは断念した。
子ど向けと一般向けなど、投影スケジュールも豊富で、私たちは一般向け45分のものをチョイス。
匠刀は子供会でプラネタリウムを観たことがあるらしくて、『懐かしい』だなんて呟いている。
開演直前、匠刀はボディバッグから何やら小さいものを取り出して、それを私に差し出して来た。
「着けとくか?」
「……ううん、大丈夫」
「着けるだけ着けといて、大丈夫そうなら外せばいいじゃん」
「……そうだね」
匠刀が差しだして来たのは、耳栓だった。
映画館と違って、大音量ではないらしいけど。
それでもやっぱり心配らしい。
彼に心配をかけてまで我が儘言えない私は、彼の手から耳栓を受け取り、装着した。
「安ものだから、俺の声、聞こえんだろ」
「……うん」
意外にも普通に聞こえた。
気休め程度……の物なのかな。
スタッフさんのナレーションから始まり、照明が落とされた室内が、一瞬で夜空へと変化した。
初めて観るプラネタリウムは、凄く幻想的で。
思わず、瞬きも忘れて見入ってしまう。
『世界最高の星空』と言われる最新機種で投影されているらしい。
ナレーションの丁寧な説明に耳を傾けながら、肉眼では見えないと言われている星を眺め、贅沢なひとときを過ごした。
プラネタリウムを観終わった桃子と匠刀は、余韻に浸りながら施設を後にする。
「満天の星空ってのを、初めて体感できたよ」
「都会じゃなかなか味わえないもんな」
今まで自分の目で見て来た星空が、ほんの一部に過ぎないことを改めて実感した瞬間だった。
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