第63話 クリスマスデートと1カット③

「あと3分」 


 腕時計をチラッと確認した匠刀は、私のマフラーを少し抓み上げて、首元が冷えないように気を遣う。

 大事にされるのは嬉しいけれど、私に気を遣いすぎなんだよね。


「今日は聞かないんだね」

「あ?」

「チューしちゃダメ?って」

「……ばーか、もうすぐ電車来んぞ」


 クリスマスだからかな。

 駅のホームにカップルが目立つ。

 

 小田急線に乗り、私たちは川崎方面へと向かった。

 登戸駅で下車してバスに乗り換え。

 十分弱乗車して辿り着いたのは、子ど向け漫画の第一人者とも言われる有名漫画家のミュージアム。

 今乗って来たバスも、人気漫画のキャラクターが描かれていて、見た瞬間から子供時代にタイムスリップしてワクワク感が止まらない。

 広大な敷地にあるこの施設は、森の中にひっそりとある秘密基地みたいで、子供心を擽る公園とミュージアムが一体化しているような施設。

 あちこちにキャラクターのオブジェが点在していて、ありきたりだけどやっぱりこれは外せない。

 家族連れの幼児に紛れて、匠刀といっぱい写真を撮った。

 高校生カップルが訪れるのはちょっと珍しいかもしれない。

 だけど、私は幼い頃に何度も入退院を繰り返していて、テレビのない病室でただじっと天井を見上げて過ごしていたから。

 子供向けのテーマパークを訪れることも、劇場版の映画を観に行くこともできなかった。


 ミュージアムは子供向けかと思っていたけど、思っていた以上に楽しい。

 常設の展示以外にも、企画もので原画展などもあって。

 アニメの歴史を知ることもさることながら、カフェやショップの可愛さにも魅了された。

 オリジナルのキーリングに刻印してくれるサービスがあって、色違いのキーリングに『T&T』と刻印して貰った。

 それと、『みらい郵便』というのがあり、ポストの投函口が鈴の形をしていて凄く可愛らしい。


「1年後まで指定した月に送ることができるって」

「へぇ、面白そうじゃん」

「お互いの誕生日にメッセージを送るってのはどう?」

「おっ、それいいな」

「じゃあ、好きな絵ハガキ買って、メッセージ書こうか」


 匠刀の誕生日は5月7日。

 17歳の誕生日を、匠刀はどんな気持ちで迎えるだろう。

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