第62話 クリスマスデートと1カット②

「なぁ、これ詰め込みすぎじゃね?」

「疲れたら、途中は省いてもいいように、とりあえずは行きたい所を全部書いたの」

「……ったく」


 駅のホームで電車待ちをしている間に、手のひらサイズにつくったデートのしおりを匠刀に見せた。

 それを見た匠刀が、思わず溜息を漏らした。


 今までは、1日デートをしても多くて2か所。

 テーマパークみたいな場所なら、丸1日かけてゆっくりと回るのが、暗黙の了解だったから。

 今日は他のカップルみたいに、目いっぱい楽しみたくて。

 そうじゃない。

 匠刀に、普通の彼氏の楽しみを存分に味わって貰いたいから。


「桃子、手袋は?」

「今日は持って来てないよ」

「は?……手が冷えんじゃん」

「大丈夫だよ。冷えたら、匠刀に温めて貰うし」

「……ばーか」


 底冷えするような12月下旬だもんね。

 手足が冷えるのを心配になるのは分かるよ。

 だけどね。

 今日は匠刀のために、可愛く仕上げて来たんだよ。


「匠刀、見て~。可愛い?」

「ッ?!……自分でしたのか?」

「うん、そうだよ。普段はできないけど、ちょっと前から練習したんだぁ」

「これって、クリスマスツリー?」

「よく分かったね」

「分かるだろ、さすがに」


 ピンクベージュに塗った上に、ゴールドのラメでツリーの形を彩ったネイル。

 その上にパールやストーン、スタッズを敷き詰めて少し立体感のあるクリスマスツリーを描いた。


「上手くできてんじゃん」

「でしょ~?」


 私の指先をまじまじと見ながら、そっと指を絡ませて来た。

 やっぱり可愛さより、匠刀は私の冷えを心配した。

 握られた手が、彼のコートのポケットに有無を言わさず収められた。

 もっと褒めて欲しかったのに。


 まぁ、仕方ないか。

 匠刀が乙女心を理解するのは二の次なんだろうから。

 いつだって私の体調が最優先。

 服装や持ち物とか、暑さ寒さを基準に判断して、余裕があったら一言二言褒める程度だもんね。

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