第57話 揺るぎない想いとあたたかい手⑥

 (匠刀視点)


 やべぇ、マジでヤバい。

 桃子がかわいすぎて直視できねぇ。

 5日も放置されたからか?

 何もしてなくても可愛い桃子が、倍増しに可愛く見える。


 少しずつ筋力をつけて、体重が増えたはずなのに。

 脚の上に乗せてることすら分からないくらい体が軽くて。

 ぎゅっと抱きしめたら、骨が折れてしまいそう。


 あーもう、いい匂いしまくりだし。

 唇すっげぇ柔らけぇーし。

 パソコン画面からチラっと振り返った時の顔が、小動物みたいで可愛すぎんだろ。


 桃子の主治医は『行為自体は可能』だと言ってたけど。

 絶対はないし、『万が一の可能性もあることをちゃんと理解しておいて』とも言ってた。

 だから、大丈夫かもしんないけど、少しでも悪くなったらどうしようって、そればかり考えてしまう。

 

 こんな風に密着してたら、俺がその気になるとは思わないのだろうか?

 それとも、俺だから安心して、この距離感なのだろうか。


「たんま」


 普段甘えたりしない桃子が、俺に寄り掛かるみたいに背中を預けながら、時折俺の腕に顔をすり寄せてくる。

そんな桃子の体を無理やり剥がすみたいにして、ちょっとだけ距離を取る。


「キスだけじゃ、終わんなくなる」


 健全な男子高生なめんなよ?

 好きな子お前を考えただけでも普通に反応すんだかんな。


「先生が、……大丈夫だって言ってたよ」

「っ……」


 知ってるよ。

 同じような質問したの、オフレコでってわけで聞いたから。

 けど、今じゃなくてもよくね?

 桃子の初めては、ちゃんと準備して、幸せな日にしてやりたい。

 俺だって初めてなんだから。

 失敗とかあるかもだし。

 やっぱ、ちゃんと段階踏まねーと、すげぇ不安だよ。


「桃子に負担かけたくないから、少しずつ慣らして……な?」

「それでいいの?」

「いいもなにも、普通、そーいうもんじゃねーの?」


 その場の空気に流されて、だなんてオチは要らねーよ。

 俺は桃子が明日も笑顔で隣りにいてくれたらそれでいい。

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