第9章
第43話 心無い言葉と抉られる思い①
「桃子、本当に学校まで歩いて行くつもりなの?」
「うん」
11月下旬の日曜日の午前10時過ぎ。
今日は自宅から白修館高校まで、頑張って自分の足で歩くつもり。
匠刀は主治医の財前先生から『筋力UP計画』なるものを教わったらしくて。
今まで避けて来た出来事や細心の注意を払って維持して来たことを、この機会に見直そうというものだった。
テーマパークでデートをした翌日から、部活から帰宅したばかりの匠刀に付き添って貰って、毎日少しずつ距離を伸ばしながら本格的なウォーキングを始めた。
そして今日、1カ月半のトレーニングの成果がどれほどのものなのか、初めて電車もバスも使わずに自力で学校へ歩い行くつもりだ。
「大丈夫ですよ、俺が付いてるんで」
「帰りは電車で帰って来るのよ?」
「分かってるって」
「本当に桃子のこと、よろしくね」
「任せて下さい」
「本当に頼むよ」
「はい」
心配で堪らない両親は、匠刀に何度も『よろしくね』攻撃を繰り出してる。
『しつけーよ』って匠刀がキレるんじゃないかと、ヒヤヒヤだよ。
ウォーキングのために買って貰ったウェア。
匠刀が好きなメーカーのレディース物にした。
さりげなく、似たような格好をしたくて。
「まるで夫婦だな」
「お父さん、そこはベストカップルって言ってよっ」
「あぁ、そうか、そうだな」
リンクコーデのことを言ってるのだろう。
普段の私は自宅でジャージを着ることがなかったから。
匠刀と同じ物を持つのは、学校の制服や体操服くらいしかなかった。
初めてお揃いの物を手にしたのは、あのデートの時に買った色違いの無地キャップだ。
玄関でスニーカーの靴紐を結んでくれる匠刀。
昔からこうして、何でも世話を焼いてくれたなぁ。
『俺がしてやる』
おままごともお人形遊びも、一緒に遊んでくれる友達がいなくて。
いつも匠刀が遊びに付き合ってくれた。
当たり前のように思っていたこういうこと1つ1つが、全て彼の努力のおかげなんだと、最近になって初めて知った。
私には勿体ないほど、できた彼氏だ。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
「気をつけるんだよ」
「では、着いたら連絡しますね」
「おー、頼むな」
両親に見送られ、玄関を後にした。
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