最初の犠牲者
「あの場では言わなかったが、うまくいくとは思えんな」
龍馬は足利尊氏の意見に反論することは出来なかった。簡単にいかないことは龍馬自身が一番分かっていた。それでも、何もしないで死を待つよりはましだ。
「私が思うに、ゲームマスターは他の参加者が持っていない物を部屋に隠し持っているのではないでしょうか」と聖徳太子。
一理あるが、織田信長たちが協力してくれるとは思えない。後々それ以外の者たちで部屋の探索を行うしかないだろう。
「しかし、こうも団体行動ばかりだと神経が参りますね」聖徳太子は伸びをする。腕につけたブレスレットの装飾がきらりと光る。紫色か。そういえば紫色は飛鳥時代では一番高貴な色だったな。
「どこかで休憩をするしかないな。坂本殿はどう思う?」
「団体行動が安全だと思うが、強制はできない。二人に任せた」
「よし、今から10分ほど休憩としよう。それでいいだろう、聖徳太子?」
足利尊氏の問いかけに聖徳太子は無言で頷いた。「じゃあ、10分後にここで」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
龍馬は休憩をしつつも誰がゲームマスターか考えを巡らせていた。候補から真っ先に外れるのは北条政子だ。ゲームマスターが早々に退場するはずがない。ゲームマスターの特権で織田信長たちを返り討ちに出来たかもしれないが、それでは自分が決めたルールに反してしまう。一日一人というルールに。それ以外には誰が候補から外れるか分からない。情報が少なすぎる。だから、こうしてダメもとで探索しているわけだが。
もう少しで10分経つ。二人も帰ってくるだろう。龍馬がそう思い椅子から立ち上がろうとした時だった。怒声が聞こえてきたのは。
「信長様に手を出したのは貴様か!」
「ちょっと待ってくれ。誤解だ、黒田殿」
声の主は黒田官兵衛と足利尊氏らしい。また喧嘩か。さて、仲裁に――。
「うわわああぁぁぁ」
続いて聞こえてきたのは聖徳太子の悲鳴だった。何事かと思い龍馬が駆けつけると、そこに広がっていたの光景は――無残にも頭を胴体から切り離された織田信長の姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます