結束と分断
黒田官兵衛は織田信長の家臣だった時代がある。そして、その黒田官兵衛が織田信長をリーダーにしようとしている。これはまずいと龍馬は思った。もし、この二人が結託したら、どうなるか分からない。
「待った。その提案は受け入れられない」
足利尊氏は即座に却下する。「お主は織田の配下だった時期があるのだから」と続ける。
どうやら龍馬以外にも気づいた人がいたらしい。流石、将軍にまで昇りつめた人物だ、抜け目がない。
「しかし、リーダーを決めねば事は進まない。織田殿をリーダーとすることに賛成の者は?」
デバイスを見ると「宮本武蔵」と表示されている。沈黙が辺りを包む。
「おい、まさか俺についてくるのは黒田だけだとでも?」
「どうやら、そのようですね」と北条政子。
「別に群れる必要もあるまい。そうしたい者同士で手を組めばいい」
デバイスを見ると「海軍軍人 山本五十六」と書かれていた。龍馬は心の中で、その考えに賛同した。誰かをリーダーにすれば、必ず上下関係が生まれ恐怖による支配が始まる。それだけは回避しなければならない。だからといって、一人でこのデスゲームを生き抜くのは困難だろう。龍馬は他の参加者が言い争う間にデバイスで参加者の情報を検索した。
参加者は龍馬を含めて11人。武将の「織田信長」に配下で軍師の「黒田官兵衛」。科学者の「ダーウィン」と「アインシュタイン」に看護婦の「ナイチンゲール」。政治家の「聖徳太子」に剣術家の「宮本武蔵」。そして、「足利尊氏」、「山本五十六」に「北条政子」。
この中で誰と手を組むべきか。一人は決まっていた。足利尊氏だ。織田信長と黒田官兵衛の関係をすぐに見抜いたのだから、頭の回転が早いのは間違いない。仲間が足利尊氏だけでは心もとない。もし、万が一裏切られたら殺される未来が目に見えている。
「ダーウィンさん、アインシュタインさん。一緒に行動しませんか?」それはナイチンゲールの提案だった。
なるほど、軍人でない者同士で手を組めば、もし襲撃されても三対一。勝つ可能性がぐーんと上がる。
「坂本龍馬、手を組まないか」と足利尊氏。龍馬からすれば願ってもないことだった。理由を聞くと「黒田官兵衛が織田信長をリーダーにしようとした時に反対の意思が表情から読み取れた」とのことだった。表情に出さないように心がけていたが、隠しきれなかったらしい。生き残るためには今後は気をつけなければならない。
「そこに私も混ぜてくれませんか? 私はあくまで政治家。軍人や武将に襲われたら、ひとたまりもないですから」と聖徳太子。断る理由はどこにもなかった。龍馬たちは無言で頷く。
「話し合いはここまでだな。俺は一人で行動させてもらう」
山本五十六は冷ややかな表情で言い放ち、部屋を去っていった。その後、宮本武蔵と北条政子も無言でその後を追う。
「ひとまず、この空間の状況把握と行こう」
龍馬の提案に足利尊氏と聖徳太子は静かに頷いた。
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