生徒会編

第15話 生徒会長の裏

 ◇11月10日


 あれから少し時間を置いて、クラスが落ち着きを取り戻した頃のこと。


「...そういえば、そろそろ新しい生徒会が発足されるそうね」


「へぇー。じゃあ、そろそろ選挙とかやる感じなの?」


「もしかして、陸、何も知らないの?」


「...知らないけど。1年だし」


「はぁ...全く...。うちの高校は毎年12月に生徒会が発足されるの」


「...遅くね?今の2年生が選ばれたら受験とかあるし、めっちゃ大変じゃね?」


「えぇ。だから選ばれるのは1年生からのみになってるの」


「...そんなことするなら時期を変えればいいのに」


「それはそうだけど伝統だからそれは仕方ないわね。それと、選挙は行われないわ」


「選挙しないでどうやって選ぶんだよ」


「完全指名制。拒否権は存在しない。そして、選ぶのは前年その役職についていた元生徒会メンバーなの」


「...なんだよ、そのクソシステム」


「これもただの伝統。と言っても、基本的には裏で先生方の推薦等があるとは聞いているけど...。ちなみに今の生徒会メンバーについてはどの程度知ってるの?」


「そりゃ会長副会長くらいは知ってるよ。入学式で挨拶したり、時々集会の時に色々やってるの見てるし」


「どういう印象を持った?」


「どうって...。別に?なんか何事にも全力に取り組む熱血系生徒会長?的な。ちょっと怖そうな感じはあるな」



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083304109285


「そう。正直、私の第一印象も同じような感じだったわ。鉄血にして熱血にして冷血の生徒会長...」


「キスショット・アセロ◯オリオン・ハートアンダーブレードかよ」


「その伏字、もはや何の意味もないわよ」


「伏字とかいうメタ的な発言やめい。それで?何が違うんだよ。てか、知り合いなの?」


「同じ中学の先輩だったのよ。そこでも生徒会長をしていた。最初こそ真面目でいい人だと思っていたけど、彼女のモットーは『人生面白くなきゃつまらない』というものでね。その中学でも大変愉快な企画をいろいろやっていたから。【ノーパンデー】とか、【先生vs生徒による本気鬼ごっこ】とか、【リアル人生ゲーム】とか...」


「...どんな中学だよ」


「自由が売りの校風だったから。それに生徒会としての役割も当然こなしていたし、先生からの信頼も厚かったし。けど、高校に入ってからはそういった動きはないようだし、安心したけど...」


「けど?」


「だからこそ、最後の最後、この次期生徒会発足に伴って何かしてきそうな気がするのよ。【負けたら生徒会長1年生全員でのじゃんけん大会】とか...」


「おい。誰だよ。そんな危険人物を生徒会長にしたのは」


「さぁ。そこまでは知らないわ。まぁ、それ以外にもあの人には色々と付き合わされたから...」


 そんな話をしていると、校内放送が流れる。


「『ハロー、生徒のみなさーん!生徒会長の燈山あかりやま 赦那しゅなでーす!さぁ、みなさん今色々と驚いていると思います!私のこのキャラとか〜、この放送は一体なんだって!いやー、もしかしたら薄々勘づいてる人もいるかなー?てことで、発表しまーす。生徒会長を決める方法は...【ゲーム】です!詳しい話は放課後、体育館でお話ししますのでよろしく〜!あっ、部活動には許可もらってるからそこは心配しないでー?そして、ここで【生徒会長権限】を使って校則を制定します!その校則内容は【ゲームに不参加なものは退学にする。そして、ゲームのルールはきちんと守り楽しく遊びましょう!】でーす!もし、来なかったら退学になるからね?よろ〜!』」


 そうして、放送は終わった。


「...やってくれたわね本当...」


「...いやいや、退学ってなんだよ。そんなの無理に決まってるだろ」


「出来るわ。それが【生徒会権限】だもの」


「...何それ?」


「生徒会長に選ばれた人間はその任期中、校則を設けることができる。勿論、非倫理的なものとか学校というものを根底から覆すようなものは却下されるけど、今回の校則は至って簡単なものだから却下されることはないでしょうね。というか、それぐらいは事前に確認しているはずでしょうし」


「...なんか大変なことになったな」


 すると、廊下の辺りでザワザワし始める。


 そのまま、うちの教室の扉が勢いよく開く。


「あはっ!こんにちは!木枯怜と獅子屋陸くん!」と、生徒会長がとても楽しそうな顔をしながら教室に入ってくる。


「...お久しぶりです。私のことなんて忘れていると思っていましたよ」


「まさか!忘れるわけないよー。私が唯一勝てなかった相手だからね!まさか同じ高校に来てくれるとは思ってなかったけど!」


「...私も先輩が居るなんて知らなかったですけど」


「いやーん、つんでれぇ〜!知ってたくせに〜!まぁ、せいぜい楽しんでよ!私の考えたゲームをさ!」と、生徒会長は手を振りながら帰っていくのだった。

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