第14話 閑話休題と猥談

「エリンと永世くん別れたらしいよ」

「そりゃそうでしょ。あんなことあった以上はね...」

「まぁでも、ザマァって感じだよねw私、前からあいつのこと怪しいなーって思ってたから」

「分かる!嘘みたいな笑顔とかねw」



 あの一件からエリンは孤立するようになってしまった。


 当然と言えば当然なのだが、それでもやはり少しだけ同情してしまう俺はどこまで行ってもあまちゃんということだろうか。


 それに伴ってか、怜さんも教室で俺とイチャイチャすることはなくなった。

二人きりの時は相変わらずではあるので、俺に飽きたとかではなく、やはりどこかでエリンに気を遣っているということなのだろう。


 しかし...反対に一人厄介な人が増えた。


「おっは〜!りっくん!」


「...おはよ、添木さん」


 今回の一件でこの添木さんという人の恐ろしさは身に沁みてわかった。

敵に回すと厄介な人間であるということ。


 だから無碍にはできないのだが...。


「ね、りっくんと怜って週何回えっちってんの?」


 なんだよ、えっちってるって。

そんな言葉は存在しない。

というか、俺たちはそんな爛れた関係では無いのだ、ら


「...ノーコメントで」と、怜さんが先に釘を打つ。


「言えないほどしてんの!思春期かよ!」


 思春期である。


「...仮に私たちが週に7回していたとして、あなたに関係あるの?」


「ある!そのうち週に一回だけ私が変わりたいなって!」


「「...は?」」と、俺と怜さんの声が被る。


「いや!うちこーみえて処女なんだよね!」


「...意味わからないんだけど。なんで私の彼氏をあんたの処女卒業のために使わせるのよ。頭おかしいんじゃない?」


「えー!いいじゃん!減るもんじゃないし!」


「嫌よ。というか、私たちに関わらないでくれる?」


 こうして、俺たちを取り巻く事件は一旦幕を閉じた。


 あまりに劇的な時間だっただけに本当にあっという間であった。



 ◇放課後


「今日、私の家寄って行かない?」


「え?あぁ、うん。寄って行こうかな」


「少し見せたいものがあるのよ」


「見せたいもの?」


 そうして、家に入ると前回とは違い静まり返った空気が流れていた。


「あれ?お兄さんはいないの?」


「えぇ。ちょっと出てもらってるの」


「...出てもらってるって」


 そうして、部屋に上がると怜さんはベッドに座るように俺に指示する。


 言われるがまま座ると目隠しを手渡される。


「...目隠し?なんで?」


「そういうプレイだから」


「ぷ、プレイ!?」


「冗談よ。少しの間目を瞑っていてほしいの。けど、万が一にでも見られたくないから念の為ね。それじゃあ、先に質問するわ」


「し、質問?」


「もし、あなたの目の前に現れるとしたらどっちがいい?A.メイド服の私。B.ナース服の私」


「...へ?」


「答えはAorBよ。へ?なんていう回答はない。次に同じような答えを言ったら、あなたにはメイド服を着てもらうわ」


「何で!?えっと、えっと...どちらかというと...A?」


「そう。分かったわ。それじゃあ、目隠しをしてくれる?」


「...あいあいさ」


 言われるがままとりあえず目隠しをする。


 すると、シュルシュルと服を脱ぐような音が聞こえてくる。


 まさか目の前で着替えているのか!?

だからこその目隠し...ということか!?


 いや、これは視覚を封じられ聴覚のみとなっているからこそ感じられる境地。

なんかエロい。すごくエロいぞ。


 そうして、数分したところで「外す前に少しいいかしら?」と言われる


「は、はい...」


「...外した後は...私はメイドになる...。陸の専用...メイド...に。だから...な、なんでも命令していいから...」


「ちょっと待って?な、なんでそんなことを?」


「...私は...陸のことを傷つけてばかり...だから」


「そ、そんなことないけど...」


「私は嫌なの。陸は良くても私は嫌なの。だからこれは私にとってけじめ。辱めを受けることが...。ううん。今後のためにも私のプライドごとぶち壊してほしいの」


 本当はずっと悩んでいたのだろう。

俺に真実を話した時も余裕そうだったけど...本当は...。


「...わかったよ」


「いつでも外していいわよ」



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083243164881


 ゆっくりと目隠しを外した。


 そこには顔を真っ赤してにこちらを見つめる怜さんであった。


 か、可愛い!可愛すぎる!


「...ご、主人様...な、何なりと、め、命令を...」


 怜さんがここまでやってくれたんだ...。

俺だってそれに全力で応える義務があるはずだ!


「...そ、そうだな...語尾に『にゃん』とつけて欲しい」


「...わ、わかった...わかりましたにゃん」


「...次は...そ、その...む、む、む、む「ただいまー!!!」と、お兄さんが勢いよく扉を開く。


 そして俺と怜を見て...。


「おっ、斬新なプレイ中だったのか。しかもまさかの妹がMとは」


 すると、怜さんはWBCの佐々木くんばりに帽子を地面に叩きつけ、お兄さんをしばくのであった。


 こんな幸せな時間がいつまでも続けばいいとそう思った。



 ◇


「ひひひっ、いやー実にいい見せ物だったなぁ。あの子達最高に面白いね」


「性格悪いですよ、生徒会長」


「顔が悪い君に言われたく無いね、副会長」


「口が悪いですよ、生徒会長」


「口が臭い君に言われたく無いね、副会長」


「...それで?まさかあの中から次期生徒会長を選ぶつもりですか?」


「いやー、そうだねー。ゲームをして決めようかなと思っているよ。生徒会をやるか、退学するかを賭けた最高に面白いゲームをね」

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