第12話 準備万端

「やっぱ、直感の通りっぽいねぇ。ふーん、あのエリンがねぇ....。けど、嫌いじゃないかもwてか、それより...どこまでいっても怜があの男を好きになる要素が見当たらないんだよなー。そもそもエリンもなんでこんなやつを当て馬にしたのかはちょっと疑問だし。焚き付けるにしてももっとマシな奴いただろうに」と、独り言を割と大きめに呟く。


 さて、こうなるとエリンの立場は地に落ちる。

けど、ここまでがもし怜の作戦だとしたら...。


 つまり、彼氏であるはずの獅子屋が騙され、本命が別に居ると知った怜はその事実を伝える。

それを伝えたことで信頼を得た怜は見事獅子屋に取り入った。

そうして、教室でいちゃつき始めればいつかエリンの取り巻きが突っかかることは読める。

そして、最終的に私が首を突っ込み、事実を公にすることで、間接的に彼の復讐を完成させる。


 ...もしこれが全部計算だとしたら、私なんて相手にならないほどの...。


「やっば...やっぱお前は堪らねぇよ...」と、私は思わず興奮してしまうのだった。


 まぁ、いい。

これが計算であれ、そうでなかったとしても、今回だけは見逃してやろう。

私は彼女の掌で踊る道化を演じることとしよう。



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083075430206



 ◇エリンの家


「...ごめんね、巻き込んじゃって」と、私は疲れた笑顔で笑う。


「俺は別にいいけど...、エリンも大変だよな。変なことに巻き込まれて。でもさ、やっぱエリンを裏切ったやつが今ものうのうと幸せを満喫しているのは...俺もちょっと許せない」と、正義に満ち溢れた顔でそう言った。


「...うん」


 そんな私を見て心配した永世くんが私を抱きしめる。


「大丈夫!俺は何があってもエリンの味方だから!ね!だから、安心して!」


 やめてよ。そんな目で見るのは。

私は...最低な女なんだから。


「...ありがとう」



 ◇1週間後 放課後 図書室


「こんなところを私に呼び出して何の用?」


「...調べ終わったの?私のこと」と、エリンはそんなことを言う。


「ん?あーもちろん流れの10割を把握した。事実は9割って感じかな。それで?まさか私に交渉をしようっていうわけじゃないでしょ?言っておくけど、何をいくら積まれても私は自分の正義を曲げることはないよ」


「...言わないでとかそういうことじゃないの。私は自分のしたことに...後悔していたの。いつかこんな日が来るんじゃ無いかって...分かってた。だから...」


 そうして、予想外のことを言われた。


「...ふーん。気持ちは受け取った。けど、私の中の正義はありのままのことを話すことだから。いい嘘も悪い嘘も私は話すつもりはない。だから、もし何かを付け足したいって言うなら、自分の口で語りな。それは否定しないでおいてあげる」


「...ありがとう」



 ◇


「はーい!クラスの皆さん!そして、永世くんちゅーもーく!今回の一件について調べてわかったことを報告しまーす!」


 全員の視線が添木さんに向かう。

本当に全てが事実ということなら、俺が口を挟む必要などない。


 けど、本当に分かるものだろうか?

たった、1週間ほどで...起こった全てを。


「さてと、こう言うのは結論から語ったほうがいいよね。今回の一件、裁かれるべき人はたった一人。それは...エリン。あんただけ」と、添木さんがエリンを指さす。


「...」


「いやいや、何言ってんの?なんでエリンが?意味わからないんだけど」と、困惑する乃木岡。


「...それは「私が話す。わたしがするべきことだから」


 そうして、エリンは語り始める。



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083085812191

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